15・木星の大宇宙戦艦隊(ネレイド視点)
「……しくじったか……。流石にあれだけで。木星の連中を乗せきるには至らなかったようだな……」
そう呟く、ゼイラムの奴。
「前方から迫りつつある敵艦艇数……、10000隻を軽く超えます。更には、後続の艦も集結しつつある模様」
ミズキが。恐怖どころか、呆れ果てたような声を放って。我が艦の周囲の敵艦艇数を告げる。
「空いてるのは、俺達の後方のみだぜ? どうすんの提督? 退く? ぶちかます?」
ケルドムの奴は、妙な余裕を見せて。攻撃兵装コンソールの上で指を遊ばせている。
「この船の足なら。いつでも逃げ出せるわよォ? 提督ゥ⁈ まさか、ぶちかますだなんてことしないわよねェ⁈」
ピウフィオが操舵輪をバランスよく左右回転させながら訊ねてくる。
「艦の状態は、ほぼ万全。ただ、艦艇転移システムのエラーだけが解除できない状態だ、ネレイド提督」
クリーズからの報告はそれであった。だが……。どうしたものかなこれは。
私はこの状況でもまだ、頭を使っていた。
どうすれば、木星首脳部と会談が持てるかという事についてだ。
「……よし、決めた」
私はそう頷くと、一人手持ち無沙汰に顎を掻いていた、バッシュの奴に声をかけた。
「バッシュ。肉弾戦闘戦準備。すぐにでも出れるように備えておけ。アンドロイド兵も使うことになる」
「? 何言ってんの提督? まさか、やらかすの⁈ それにしたって、艦隊戦だろ? 俺の出番なんて……?」
「いいから。備えておけ!! 見ていればわかる!!」
「お、おう。分かったぜ」
バッシュはそう言うと、アンドロイド兵を格納してある船頭部の方に向かって艦内を移動する為に、ブリッジから出ていく。
さて、かますか。先ずは。
「メルシェ!! 科学技術魔法術式展開だ!! 『
「……なるほど。了解を致しました。船頭に魔法陣を展開し、物理化学エネルギーを魔力に転換するまで。チャージ致します。『アフラ・アル・マズダ、帯魔力準備入れ!!』」
コイツ……。また頭の中を読んだ。メルシェは有能なのだが、この先を読み、心を読みすぎる癖は。いずれコイツ自身が有機スクラップにされる(殺される)原因を呼ぶんじゃないかとか。私は思ったが。
有能なAIは人ではないので、状況に対応し、理想的に事柄を動かすためには自分の身を犠牲にすることを惜しまない。
なんだか、それも悲しいなぁ、とか。
私が思っていると。
「丸々、心の声が聞こえますよ。提督。私は、有機AIの中でも特に高コストで作られていますので、費用対効果に見合わない自己犠牲は致しません。どうぞご安心を」
あー。なんか超つまんねぇ模範解答が返ってきやがった。それは、いいとして。
アフラ・アル・マズダ号の船頭には、光で記された
「よし、メルシェ!! エネルギーを船頭にとどめたままの状態を維持!!」
「⁈ 発射は⁈」
「しない!! ミズキ、敵の旗艦があると思わる位置を特定!!」
メルシェが分析不能の行動指示をする私に驚き、私がミズキに向かってそう問うと。
「ほぼ直前角度、位置は最奥です。何をなさるつもりですか? 提督⁈」
「あ!! その手がありましたか!!」
メルシェの悟りがやたらと早い。次いで、気が付くのがクリーズ。
「面白い戦術だ。ここまで艦船機能に差がなければ不可能ではあるが」
悟りが伝播する。続いてミズキとケルドム。
「あー! なるほどです!! その手ならば!!」
「なーるほど。普段から殺しは極限まで控えろって俺に説教すれだけはあるぜ」
一人理解が及ばないのが、ピウフィオだが。私が怒鳴りつけると。
「ピウフィオ!! お前の操舵術の出番だ!! この船で特攻をかける!! 目指すは敵旗艦!! 旗艦をぶち抜けば、敵は動く指針を失う!!」
「!! あーはー!! なーるほどぉ!! やるってのね? やるって言うのなら!! 今ピウフィオさんも、覚悟つけちゃうわよォ――――――!!」
そう言葉を放って、自分の右手元の機動コンソールを弄り、アフラ・アル・マズダ号の機動部をフル稼働!!
「ぶっかますわよぉー!! こうなったら弾けるのが乙ってモンでしょう!!」
操舵輪を両手でがっしり握り、足でブーストペダルを踏むピウフィオ!!
更には! 叫び続けて右腕で機動コンソールをぶん殴ってスイッチを入れ! ものすごい加速度を船に掛けた!!
「加速が弱いわねぇ――――っ!! オーラブーストアクセル追加―っ!!」
雄叫びを上げながら!!
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