10・ゼイラム弁論術炸裂!!

 アフラ・アル・マズダ号の主砲発射口から、超大出力ホーミングレーザーが迸り出て!!

 曲線を描いて飛んで行き、敵ムータアズマ級宇宙戦艦隊の先頭の船の鼻っ柱を強かに叩いた!!

 そこから、中規模爆発が起きて。

 さすがに、あのクラスのサイズの宇宙戦艦は耐久力が高いようで、我が旗艦の主砲の一斉射にもよく耐え。一度浮力を失いかけ、木星の海面に向かって落ちていこうとしたが姿勢制御スラスターを使って態勢を整え直した。


『⁈ どこからだっ!!』


 誰かがそう叫んだようだ。心底からの動揺の声というものは、『霊声』の形になって発されるために、距離を開けていても良く聞こえる。『霊聴』能力を持っているものには。


「プッ!! わっはははは!! 緒言しょげん命中!!」


 ゼイラムが大笑いをしている。おい、緒撃しょげきだぞあれは。緒言じゃない。

 私がそう言うと……。


「これは言語です。物理的な言語というものです!! 私はここから弁論術を展開します!!」


 なるほど、マキャベリズム。ありとあらゆる手法を使って物事を動かす。


「何バカなこと言ってんのよォ! 副官サマ!! あんなコトしたら、向こう怒り狂って!! ぶっ放してくるわよォ!!」

「操舵長!! ビビるな! オラァ―――――――――ッ!! 聞けぇ――――――!! 『木星宇宙軍の連中!! こちらは地球宇宙軍第47艦隊旗艦、アフラ・アル・マズダ号!! 貴様ら木星に会談を申し込みたく参った!!』」


 ブッチ切れて霊音マイクに叫ぶ、ゼイラムの奴。私は、コイツが弁論の一部という意味で敵の砲撃を浴びせ、気勢を挫いて大人しくさせる手法だとは分かったが……。

 さて、木星人はどう出るか、な。


『会談だと⁈ いきなり主砲を撃ち放ってきて何を言う!!』


 当然来た。木星宇宙軍艦艇からの反応。


『示威行動だ!! こちらにはこれだけの力は軽くあると云うな!! さて、どうする? 会談を持つか? このまま戦闘に入るか? こちらはどちらでも構わんぞ!!』


 怒涛の攻め。ゼイラムめ、あの臆病そうだった様子は鳴りを潜め。おのれの為すべきことを為しているときの男の精気が漲りまくっている。


『この……!! 全艦隊戦闘準備!! あの海上に停泊している白金の船に爆撃を掛ける!!』


 だが、こうなるだろうな。やはり短気単細胞の木星人。怒りに任せて戦闘準備を始めた。


『いいのか? 後悔することになるぞ? ハハハハハ!!』


 狂ったように高笑いするゼイラム。コイツ本当にあぶねえ。


『……貴様らは……。このムータアズマ級六隻を相手にしても恐れぬというのか?』

『当然だ!! このツァラストラ級艦艇を舐めるな!! ムータアズマ級ぐらいなら簡単に撃沈できるわ!! ケルドム少佐!! 敵の艦艇に一斉射!! もう一隻ぐらいにダメージを与えて、こちらの実力のほどを教えてやるのだっ!!』


 ケルドムが、私の方を向いて聞いてくる。


「どーすんの? 提督。ぶっ放すの? やるんなら俺撃つけど」


 相も変わらずコンソールの上で指を遊ばせて。私に聞いてくるケルドム。


「……そうだな。一斉射のみ。連発はするな」

「ラジャー。やるよ」


 ケルドムがそう言って、コンソールを操作し始めると。

 アフラ・アル・マズダ号の船べりについているホーミングレーザー発射用の砲口が動き、ターゲットを先程の敵艦とは違う一隻に狙いを定め。


「ホーミングレーザー、発射!!」


 の言葉と同時に、ケルドムが叩いたコンソールの操作通りに、敵追跡破壊レーザー光を放った!

 敵ムータアズマ級の二隻目にそれは命中。爆発を上げて、姿勢を崩しかける敵艦艇。


『まだやるか⁈ 死にたいのか⁈ それならぶち殺してやるぞ? こちらには特殊兵装もまだ残っているのだからな!!』


 吼える、吼えまくるゼイラム!! とにかく迫力で相手を飲むのが、交渉を上手くまとめる手段の初歩であるかと言わんばかりだ。


『……わかった。話を聞こう。貴様らは、何を望んでこの木星に来た? 会談の内容とは何か?』


 おお! 凄いなゼイラムの奴! 強引な手段とは言え。相手を対話に引きずり込んだぞ!!


『まずは、お互いに親睦を深めようではないか。貴軍の各艦長に護衛をつけて。我が艦の中に来る度胸があるのならば。「地球流の応接」で以って答えるが?』


 ⁈ 何言ってんだゼイラムの奴? この船の中に木星人を入れる気か⁈


「それは少し危ないのではないですか? ゼイラム副官殿」


 ミズキが、そう言うが。


「こちらの腹の中を先に見せることが。敵の腹の中をさらけ出させる摘要というものですぞ、ミズキ大尉」


 そんなことを言う、ゼイラムであった。

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