6・悪魔公爵、任務完遂
『チッ……!! このくそバカめ! ルルジュ!! こいつらをぶっ殺しちまったら!! ソピア様の命に背くことになるだろうがっ!!』
!! なんだ? この悪魔公爵……、エリゴールと言ったか? 何故か、私の眼前に転移をしてきて、巨大な結界球体を作り。私とアフラ・アル・マズダ号を護った⁈
『エリゴール!! ワタシ、ソイツ嫌イ!! 殺サセテヨッ!!』
『ダメだ!! このトンチキバカ娘!! こいつらには、木星の実態をしっかり見せる必要がある!! どんだけ木星人が、血のにじむような労働をしているかをな!』
『ウ―――――……。モウ! ソノ気ニナレバ。一撃消滅サセラレルノニ!』
『いいから、俺の言うことを聞け! じゃねーと、もう肉球でおっぱい揉んでやんねーぞ!』
『ソレハ、イヤ♡』
『じゃあ、いうこと聞くんだな?』
『ウン♡』
『多分な。この地球製の艦艇には、自己修復機能がある。だから、推進機動部を破壊しろ。そこだけをな。この提督は、俺が抑えとく。やれ、ルルジュ!!』
『ウン、エリゴール!!』
珍妙な会話を繰り広げたのちに。再び大鎌に光の大刃を発生させる、死神天使ルルジュ!!
『させ、るかぁ――――――っ!!』
私は、それを妨害せんと。再び精神力攻撃技法を使おうとしたが!!
『ダァーメ!! その技法は俺は知ってる。潰し方もなっ!! 喰らえ!! 「
エリゴールの手元から、紫色の邪光が広がる⁉ それに包まれたと思ったら……!! うぐっ!! なんだ⁈ この凄まじい不快感と、集中力の散漫は!!
『貴……様!! 何を……、したっ……!!』
ハッキリ言って。私は今まで感じたことのない高濃度の不快感に、息も絶え絶えになっていた。なんだ、これは? こんな感覚は本当に感じたことがない……!!
『ソーレッ!! 「
いかん!! 私が、エリゴールの発生させた不快感のフィールドの中で動きが取れなくなっている間に! 死神天使の奴が、アフラ・アル・マズダ号の機関部に強烈な攻撃を加えてしまった!! 機関部だけを狙い撃ちにした攻撃に、その部分だけが爆発を起こす!!
『提督っ!! 艦内のコンピュータ、システム再起動成功です……、が!!』
『メインエンジンやられちゃったわよォ――――――!! どうするの⁈ 提督!!』
技術士官のクリーズと、操舵長のピウフィオの霊声通信が響いてくる!!
『……!! ちっ!! 待っていろ、すぐブリッジに戻る!!』
私はそう言うと、瞬時に転移術で船のブリッジに戻った。そして、戻るなり大声で管制官のミズキに聞いた。
「艦は、どういう状態だ⁈ コンピュータの再起動は成功、機関部に大ダメージ。それはわかった。だが、その他の状況は? ミズキ!!」
「ネレイド提督。艦はほとんど無傷の状態ですが、機関部のみは大ダメージを負っています。要するに、他には問題はないのですが、全く動くことができません!!」
「艦の空間転移機能は生きているか?」
「いえ、それだけは。クリーズ技術少佐の言うにはエラーを修復できていないそうです……」
「……くそっ!! あの死神天使と悪魔公爵め!! 私たちを何としてでも木星に堕とすつもりかっ!!」
「先ほどの、あの二体のアンノウンの会話は聞こえていました。どうやら、そのようですね。そして、我らにはそれに抗う術がない……。実力が隔絶しています……」
艦外。ブリッジの前のワイドウィンドウの前で。あのルルジュとエリゴールの奴が、顔を思いっきりこっちに近づけてきて。
意地の悪い笑いをニヤニヤニヤと浮かべている。
そして、二体の『化け物』が姿を消したかと思うと。
私たちの船、アフラ・アル・マズダ号が、機動も掛けていないのに、視界に入っている大きな木星の方向にどんどんと進んでいく。
「……あーったぁ……。木星人って、重力強いところで生きてるからよ。筋骨隆々なんだろ? まあ、対重力保護スーツ着て作業してるって聞くから、そこまでじゃないだろうけど……。オレの腕力で。通じるかねぇ……。バトルになっちまったら」
今まで黙っていた、肉弾戦闘部隊長の、バッシュが嘆声を上げる。まあ、コイツは部隊長とはいっても、部下となるのは全部アンドロイド兵で。コイツがやるのは、切り込みの先頭に立つことと、戦闘のための思考を練ることだ。それが、アンドロイド兵に伝わって。コイツの戦闘隊長としての力量が存分に活きることになる。勿論、バッシュの奴自身の戦闘能力はアンドロイド兵を遥かに凌駕するのだが。
「とにかく。まずは木星海上に軟着水をすることです。プレートに激突して、一撃大破では洒落になるものではありませんから」
有機AIアンドロイドのメルシェがそう言う。
「その為には、まず。アレね。主機動機関の修復は間に合いそうにないから、艦艇姿勢制御システムの修復を先に、っと」
操舵長のピウフィオが技術士官のクリーズと話し込んで、優先して直す機関部を選んでいる。
どちらにしても、この私たちは、木星に降りて。
木星の実態を見ることになるだろう。
しかしながら、奇しくも。私はあることを思った。
『これは、この先の私たちの行動にとって。最も必要な事ではないのか?』
などということを。
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