5・ネレイドVSルルジュ
『……貴様らは……。何者だ?』
私は、物質を透過して届く声である『霊声』を放って。ブリッジのワイドウィンドウの前に至った、死神のような鎌を構えている天使に聞いた。
『フフッ……。ワタシハ、ルルジュ。死神天使ノ、ルルジュ。貴方達ノ酷イ行イヲ妨ゲル者』
答えが返ってきた。会話が可能なようだ。
『酷い行いというが。我らはまだ何もなしてはいないぞ?』
『コレカラ。スルノデショウ?』
『いや……。そのつもりはない』
『何故? イマノ木星ト地球ハ、マサニ宿敵。膨大ナ物資ヲ誇ル木星宇宙軍ト、先進兵器ノ戦力ヲ持ッタ地球宇宙軍。双方トモニ疲弊シテクレレバ。太陽系ニハ平和ガ一時的トハイエ訪レルワ。ワタシモエリゴールモ。ソレヲ望ンデ、現世宇宙ニ介入シテイルトイウノニ。ヤリタイヨウニヤリナサイヨ。変ナ我慢ハ心ノ毒ヨ? 未熟ナ人類サン』
『……そこまで私たち人類を舐めるな、死神天使!!』
『知恵モナイ、力モナイ、心モロクニ成熟シテイナイ。ソレガ、人類トイウモノデショウ? ワタシガ、貴女達ノ旗艦ヲ残シタ理由ハ。人間トイウモノハ、生キテ苦シマナケレバ成長シナイモノダカラヨ♡』
可憐で驕慢な笑いを浮かべる、窓の向こうのルルジュ。この死神天使とやら、相当に性質が悪いぞ……!
「まあ、そう言うわけでな。ワリィが、この船。落とさせてもらうぜ。お前らの宿敵のウジャウジャいる木星に!!」
後ろから聞こえるのは、悪魔公爵の声。ルルジュの言うには、エリゴールと言う名らしい。
「こら、このノラ猫め!! 何を言っているのか!!」
突然、そんな声が聞こえた。私が振り返ると、私の副官のゼイラムが髭面を怒らせて、あの悪魔猫の頭を鷲掴みにしている。
「……おい、髭親父。テメェ、死にてぇのか?」
サングラスの下の眉間に、凄まじい皺を寄せるエリゴール。ゼイラムのバカ者め!! あの悪魔公爵とやらのヤバさに気が付かなかったのか!!
「そうだなぁ。まずは、この船の中枢コンピュータに。『気絶してもらう』か!!」
悪魔公爵エリゴールがそういうと! アフラ・アル・マズダの全照明が一気に落ちた!!
宇宙から入る星明りと、眼前の木星が太陽光を反射した明りしか、ブリッジには入ってこない。何をしたんだ、あのエリゴールとやらは!!
『デハ。堕チテモライマショウカ♪ 木星ノ大地マデ!!』
大鎌に、巨大な光の刃を発生させて。このアフラ・アル・マズダ号を機能不全にしようとしているルルジュ!!
『させるかっ!!』
私は、宇宙軍人の中でもごく一部の者にしか使えない、『自己存在確率操作』の技法を使って、ブリッジから外の宇宙空間に自分を転移させた! そして、ルルジュに向かって攻撃を放つ!!
『喰らえッ!!
私がぶっ放したのは、おのれの精神力を放出して武器にする、精神破壊攻撃術だ。こと、高等知的生物に対しては強烈な威力を誇る攻撃術である。
『ッ……!! ア……ァア!! ナニ⁈ コレ何⁈』
ルルジュは、私の精神破壊攻撃術をまともに頭に貰って。両目から大量の血を噴出させた。精神破壊攻撃は、その威力を肉体にも強く及ばさせるのだ!!
『イタイ……ッ!! 許サナイ!! 私ヲ傷ツケルナンテ!!』
その、水色の髪に丸い帽子をかぶった頭を振って。
ルルジュは、怒りに満ちた突撃を私に向かって行ってきた!!
天使の両翼が光の粒子を散らしながら、羽ばたいて。大きく振り上げられた大鎌から、光の刃が私に向かって振り下ろされる!!
『転移回避!!』
私は、生身の人間が宇宙空間で動くための唯一の手段である転移術で以ってそれを回避! 間一髪だった!! 先ほどまで私がいた空間には、私の長い銀髪の切れたものがふわふわと浮かんでいる。
『ニガサ……ナイッ!!』
しつこい!! ルルジュは転移した先の私に向かって、また飛びかかってくる!
『
連続転移は、精神力の消費が激しいので。私は今度は精神力で創る壁を張った。
すると。
バキィイイイイイイイン!! と。
霊的な音声というか。一般的な意味では「音」を発さないはずの真空中に、『霊音』が鳴り響いた。ルルジュの鎌の光刃攻撃を、私の防御壁が弾いた音だ。
『……貴様は。破壊力は凄まじいが、戦い慣れていないな?』
私は、ルルジュにそう言い放った。なんにせよ、攻撃の一つ一つが荒っぽい。
『ウル……サ――――――――――――――――イッ!!』
あ、いかん。ルルジュが。私の一言にキレた。経験不足の指摘に頭に来たようだ。
そして、物凄まじい光熱エネルギーを集中し始め……。
『船ゴト消エテ無クナレェ―――――――――――ッ!!』
と叫び、私ごとアフラ・アル・マズダ号を包み込むような大爆発を起こした!!
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