いただきますとごちそうさま




 筍ご飯。

 筍の天ぷら。

 筍と厚揚げ豆腐の醤油煮。

 筍と刺身こんにゃくの酢味噌和え。


 茜雲は座って長庚と彎月と共にいただきますと言うや、丸太卓からこれらの料理が乗った木皿をハンカチを敷いた床に置くと、長庚と彎月に身体を背けたまま食べ始めた。

 長庚と彎月は顔を見合わせては、茜雲に話しかけることなく明日の予定を話し始めた。


「明日は俺の友たちが筍掘りに来るから、おめえは休みだったな」

「はい。でも俺は本当に手伝わなくていいんですか?」

「ああ。ここ毎日夜明け前に筍掘りをしちゃあ麓に運搬を繰り返して疲れただろう。筍掘り体験も今年は申し込みが多かったしな。ゆっくり休めや」

「親方も休んだ方がいいんじゃないですか?」

「ああ。そうだな。まあ、明日の昼はゆっくり休むわ。おめえはどうすんだ?」

「はい。藤の下でゆっくり過ごそうかと思ってます」

「ああ。そういや、ちらほら見るな。何だ?秘密の場所でも見つけたのか?」

「はい」

「そうかそうか。ゆっくり休めや」

「はい」


(もう、何よ!おじいちゃんも彎月も私に話しかけないなんて!)


 茜雲は長庚と彎月に怒りの言葉をぶつけたかったが、自分からは話しかけたくなかったので無言で食べ続けるのであった。

 もちろん、ごちそうさまでしたは一緒に言った。











(2023.4.22)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る