1 相合傘は距離が近い

 実際のところ、傘のない私に選択肢などなかった。


「ごめんなさい。よろしくお願いします…」

 桐山くんの横に並ぶと、距離の近さに緊張した。やっぱり無理だと逃げ出したい。


 視界の端には桐山くんの傘を持つ手があり、少しでも見上げようものなら顔が見えるだろう。顔が見えたら卒倒しそうなので、一心に前を向いて歩くことだけを考える。


「西野はさ、しっかりしてるようでいて、こういうとこ本当抜けてるよね」

 声が上から降ってくる。近い。


「返す言葉もございません…」

 自分のまぬけっぷりを今一番後悔しているのは私自身だ。


 隣に桐山くんの気配を感じながら、隣を見ずにペースを合わせることだけに集中する。



★★選択肢★★

①桐山くんは駅のほうに歩いていく

  →1−①へ


②桐山くんは事務所の裏側に歩いていく

  →1-②へ

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