お姉ちゃんのおかげで幸せだったから

「美葉、そろそろ、ロウソクが溶けてきてるから、吹き消してね」


 お姉ちゃんは私にそう言いながら、電気を消した。

 すると、ケーキに刺さったロウソクの火の光だけが残った。

 

「お姉ちゃん、消していい?」


 そして、お姉ちゃんが私の隣に座ったところで、私はそう聞いた。 

 さっき吹き消してって言われてたけど、一応。


「ふふっ、いいわよ」


 お姉ちゃんの言葉を聞いた私は、目を閉じながら、ロウソクの火を吹き消した。

 目を閉じるのは、昔、お姉ちゃんに、目を閉じてロウソクを消したら、夢が叶うって言われたから。……まぁ、別に今はそんな叶えたい夢なんてないんだけど……なんとなく、あの時言われた通りにずっとしてる。

 ……あの時は、何を願ったんだっけ。……もう、忘れちゃったけど、まぁ、いいや。


 そして、私がロウソクを消したところで、お姉ちゃんは私の頭を少し撫でると、立ち上がって、ケーキナイフを持ってきてくれた。

 そして、また私の隣に座ると、火の消えたロウソクを取って、ケーキを四分の一に切ってくれた。


「美葉、誕生日おめでとう。もう食べていいわよ」

「うん。ありがとう、お姉ちゃん。お姉ちゃんも一緒に食べよ?」

「ええ」


 そう言って、私はお姉ちゃんが買って来てくれたケーキを二人で食べた。

 

「美葉、残りは明日食べよっか」

「うん」


 そして、食べ終わったところでそう言って、お姉ちゃんはケーキの半分を冷蔵庫に持って行ってくれた。

 私はお皿を台所に持って行ってから、ソファに座った。

 すると、お姉ちゃんも隣に座ってきたから、私はお姉ちゃんの肩に頭を乗せて、体を預けた。

 今日は、お姉ちゃんのおかげで幸せだったから、ちょっとだけ、サービスみたいな感じだ。……お姉ちゃんには早く私以外の人を好きになって欲しいけど、少なくとも、今は私のことが好きなんだから、嬉しい、はず。……私も、嫌なわけじゃないし。


「美葉、お風呂、入りたくなったら言ってね」

「……うん。分かった」


 お腹がいっぱいで、お姉ちゃんの体温が温かいのもあって、眠い気持ちのまま、私はそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る