反動


「ごめんね、美葉。少し遅くなっちゃったわ」

「べ、別にいいよ。いつもより、40分くらい遅かっただけだし」


 ほんとは、不安な気持ちでいっぱいだったけど、強がって私はそう言っ


「ふふっ、そうね。確かに、40分くらいだけど、美葉を不安にさせちゃったみたいだから、ね?」

「べ、別に……不安になってなんか、ない……こともない、けど、ちょっとだけ、だし」


 不安になんて、なってない。そう言おうと思ったけど、私は少しだけ、素直にそう言った。

 

「今からご飯、作るわね」


 すると、お姉ちゃんは嬉しそうにしながらそう言って、私の頭を撫でてきた。

 

「……うん」

「あ、それと、ケーキも買ってきたからね」


 私が、お姉ちゃんに頭を撫でられながら、不安そうに頷くと、急にお姉ちゃんが振り返って、そう言ってきた。

 

「……ケーキ?」

「ええ、今日は美葉の誕生日でしょ? だから、買ってきたのよ。……それと、美葉が変な勘違いして、また不安になる前に言っておくけど、今日はケーキを買ってきたから遅くなっただけで、誰かと、何かをしてた訳じゃないわよ」


 そう言えば、今日って、私の誕生日、だったんだ。……完全に、忘れてた。

 ……そっか。そう、なんだ。お姉ちゃん、誰かと一緒に居たわけじゃないんだ。

 別に、お姉ちゃんが誰と一緒にいようが、私には関係ないし、全然いいんだけど、ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ、私は安心した気分になって、お姉ちゃんにお礼を言った。


「お姉ちゃん、ありがとう!」

「ふふっ、喜んでもらえて良かったわ」

「えへへ」


 私は嬉しくなって、そんな笑みがこぼれてしまった。

 すると、お姉ちゃんは私の頭をまた、急に撫でてきた。

 私はさっきまで不安な気持ちだった反動からか、今は、嬉しい気持ちなんだけど、もっとお姉ちゃんにくっついていたくなって、お姉ちゃんにそのまま抱きついた。


「あ、あら、美葉? もちろん私は嬉しいんだけど、急に積極的過ぎないかしら?」


 お姉ちゃんが何かを言ってきてたけど、私はそんな声なんて聞こえてなくて、そのまま、お姉ちゃんに顔を埋めて、すりすりした。

 別に、お姉ちゃんのことをそういう意味で好きなわけじゃないけど、今くらいは、あんなに私を不安な気持ちにさせたんだから、いいと思う。……もちろん、ケーキを買ってきてくれたことは嬉しかったけどさ。

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