楽しかった

「おはよう」


 お姉ちゃんと別れて、学校に着いて、教室に入った私は、そう言った。


「夏希もおはよう」

「……ん、おはよ」

 

 そして、席に座った私は、夏希にもそう言った。


「夏希は昨日、何してたの?」


 私は、何となくそう聞いた。

 今更だけど、夏希って私と遊んでない時とか、休みの日って何してるんだろうと思って。


「……寝てる」


 夏希は、眠たそうにそう答えてきた。


「……ずっと?」

「……ん」


 暇じゃないのかな。……いや、普通に寝てるから、暇では無いのか。……まぁ、私は夏希じゃないし、私には分からないけど、夏希が幸せなら、いいんじゃないかな。……友達の休みの日の過ごし方にとやかく言う資格なんて、私にないし。


「……美葉は、何してたの?」


 私がなんて言えばいいのかを迷っていると、夏希がそう聞いてきた。


「私? 私は、お姉ちゃんとデ――じゃなくて、お出かけ! お出かけしたよ!」


 私は咄嗟にデートって言っちゃうそうなのを誤魔化すために、少し声を大きくしながら、そう言った。

 ……お姉ちゃんが、デートなんて何回も言うから……夏希に誤解されるところだったじゃん。


「……そうなんだ」


 私が内心焦っていると、夏希は自分から聞いてきたくせに、特に興味が無いみたいな感じで、頷いてきた。


「……楽しかった?」

「楽しかったよ」


 そして、夏希が一応といった感じで、そう聞いてきたから、私は素直に頷いておいた。

 

「……良かったね。……私も、楽しかったよ」

「寝るの?」

「……ん」


 まぁ、楽しかったんなら、良かったんじゃないかな。

 何回考えても、寝るのが楽しいっていうのはよく分からないけどさ。

 

「夏希、今日遊べる?」

「……今日は、用事、あるから、やめとく。……あと、寝るから、起こして」


 夏希はそう言って、机にうつ伏せになっていった。

 まぁ、用事なら仕方ないかな。

 私はどうせ、授業が始まる頃には起きるんだろうなぁ、と思いながら、夏希に、見えてないだろうけど、頷いておいた。

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