ノーカウント、なんだけどさ

 クレープを食べ終わると、また、お姉ちゃんに手を繋がれた。……さっき良いって言っちゃったから、特に抵抗せずに、私はお姉ちゃんと一緒に歩き出した。


「美葉、映画でも見る?」


 少し歩いたところで、お姉ちゃんがいきなりそう聞いてきた。

 少し先に、映画館があるから、かな。


「私はどっちでもいいよ」


 今は特に見たい映画はないけど、お姉ちゃんが見たいのがあるのなら、と思って、私はそう言った。結構、お姉ちゃんと私の趣味って似てるから、お姉ちゃんが見たいやつなら、私も楽しめると思うし。


「ふふっ、私も見たい映画がある訳じゃないから、一緒に見に行きましょうか」

「うん」


 私はお姉ちゃんの言葉に頷きながら、一緒に映画館に向かった。

 

「お姉ちゃん、何か面白そうなのあった?」

「美葉はなかったの?」

「私は、特に何も無いかな」


 パッと見では、特に気になるものがなかったから、私はそう言った。

 すると、何故かお姉ちゃんは私の頭を撫でながら、あれにしようと言って、チケットを買いに行った。


 そして、お姉ちゃんと一緒に、チケットを受付の人に渡して、映画館の中に入った。

 お姉ちゃんと隣同士に座って、お姉ちゃんが買ってくれたポップコーンを一緒に食べながら、私は映画が始まるのを待った。





 映画は見終わった。……見終わったんだけど、上手く、お姉ちゃんの方を見られない。……だって、女の子同士が、事故とはいえ、キス、してたから。……だから、お姉ちゃんと、した、ことを思いだしちゃう。……い、いや、あれは、ノーカウント、なんだけどさ……


「美葉、終わったわよ」


 そして、電気が着いて明るくなっても私が席から立たないからか、お姉ちゃんがそう言ってきた。


「わ、分かってるよ」


 私は首を振って、あれはノーカウントだと自分に言い聞かせながら、そう言った。


「ふふっ、もしかして、あの事故のシーンを見て、思い出しちゃった?」

「ち、違うから! なんにも、思い出してなんかないし!」

「ふふっ、そうね。取り敢えず、外に出ましょうか」


 お姉ちゃんは微笑ましいものを見るように笑ってから、食べ終わったポップコーンの入れ物を持って、私と一緒に、映画館を出た。

 

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