今更、動揺することなんて

 お姉ちゃんと手をつなぎながら、適当に歩いていると、クレープ屋さんが見えてきた。

 私が、最後に食べたのっていつだろうと思って、視線を向けていると、お姉ちゃんに話しかけられた。


「美葉、食べたいの?」

「あ、ううん。ただ、見てただけだよ」


 久しぶりに食べたい、とは思うけど、クレープって結構高いし、私は遠慮しておいた。

 別に、どうしても食べたいわけでもないしね。


「ふふっ、美葉、遠慮しなくてもいいのよ」

「べ、別に遠慮なんてしてないよ」


 お姉ちゃんにそう言われた私は、慌ててそう言った。

 確かに、遠慮はしたけど、どうしても食べたいわけじゃないんだから。


「大丈夫よ。美葉が遠慮してないんだとしても、私が美葉と一緒に食べたいのよ」


 そう言って、お姉ちゃんは私の手を引きながら、クレープ屋さんに向かって行った。

 お姉ちゃんが食べたいのなら、いい、かな。


「美葉、どれにする?」

「えっと、じゃあ、このいちごのやつがいい」


 お姉ちゃんにそう聞かれた私は、そう言っていちごのクレープを指さした。チョコバナナとちょっと迷ったけど、いちごのやつにした。

 すると、お姉ちゃんはいちごのクレープと、チョコバナナのクレープを頼んでいた。

 ……私が迷ったやつだ。……たまたま、だよね。


「美葉、一口食べる?」


 お姉ちゃんは、私にいちごのクレープを渡してくれた後で、そう言ってきた。


「い、いいの?」


 私はさっき迷ってたこともあって、すぐにそう聞き返してしまった。


「ふふっ、もちろんいいわよ。あ、でも、私も美葉の一口もらっていい?」

「う、うん! いいよ!」


 私はお姉ちゃんの言葉に頷いて、手に持っているいちごのクレープをお姉ちゃんの方に向けて手を伸ばした。

 すると、お姉ちゃんは嬉しそうに、髪がクレープにつかないようにしながら、食べてくれた。


「美葉も食べていいわよ」


 そして、そう言いながらお姉ちゃんもチョコバナナのクレープを私に向けてきて、手を伸ばしてきた。

 私もお姉ちゃんみたいに髪がクレープにつかないようにしながら、一口食べた。


「美葉、間接キスね」


 久しぶりに食べたけど、美味しいなぁ、と思いながら、自分のクレープを食べようとしたところで、お姉ちゃんがそう言ってきた。

 その言葉を聞いた私は、口に運ぼうとしていたクレープを止めてしまった。


「い、いきなり何言うの」

「ホントのことでしょ? 姉妹なんだから、普通じゃない」


 た、確かに、姉妹なんだから、普通、だよね。……そもそも、間接キスなんて、もう何回もした事あるんだから、今更、動揺することなんて何も無いんだから。……お姉ちゃんがデートなんて言うから、変に動揺しちゃった。


 そう思って、私は今度こそクレープを口に運んで、食べた。

 甘い。……チョコバナナの方も甘かったけど、こっちも、甘いね。


「美味しいよ。買ってくれてありがとね、お姉ちゃん」


 変なことを言ってきたけど、お姉ちゃんが買ってくれたクレープだから、私は笑顔でそう言った。


「ふふっ、美葉が喜んでくれて良かったわ。後、私も美葉の味、美味しいわよ」

「……クレープの味でしょ」


 そう言いながら、私はお姉ちゃんから顔を逸らした。

 

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