匂いなんて嗅がないでよ

「こっち、おいで」


 そう言って、お姉ちゃんは膝をポンポンしてくる。

 私はそれを無視して、普通にお姉ちゃんの隣に座った。

 すると、体を持ち上げられて、お姉ちゃんの膝の上に連れていかれた。


「な、なに、お姉ちゃん」

 

 今日は別に、お姉ちゃんの前でイチャイチャしてるフリなんてしてないのに。

 あれ、逆に言えば、お姉ちゃんが見てないのに、イチャイチャしてるフリをしてたような……


「美葉、随分、あの子の匂いが染み付いてるのね」

 

 私がそう考えてると、お姉ちゃんがそんなことを言ってきた。


「い、いきなり何言ってるの。てか、匂い嗅がないでよ」

「お風呂、入ろっか」

「ま、まだ早いよ」


 お姉ちゃんはいつもならまだお風呂に入らない時間なのに、私の言葉を無視して、そう言ってくる。


「そんな匂いを付けたままだったら、エッチなことしちゃうかもしれないわよ」


 お姉ちゃんはそう言って、私の胸あたりに手を当ててくる。

 

「お、お姉ちゃん……は、入るから、そ、そんなとこ触んないで」

「昨日は触らせてくれたのに?」


 お姉ちゃんはからかうような声色でそう聞いてきた。


「き、昨日はちょっと、お、おかしかったんだよ! だから、は、早く離して。お、お風呂はいるから」


 そう言うと、お姉ちゃんが手を退けてくれたから、お姉ちゃんの膝から立った。


「……自分で脱ぐからね」


 お風呂場に着いて、私はそう言った。いつも服を脱がせてこようとするから、今日は脱がしてもいいかを聞かれる前に言っておこうと思ってたから。

 

 そして、そのまま自分で服を脱いで、お風呂場に入った。





 私はお姉ちゃんにまた変なことをされないか、警戒しながら入ったんだけど、特に何事もなく、お風呂に入り終わった。


「ふふっ、どうしたの、美葉」


 私がお姉ちゃんの事をじろじろ見てたからか、お姉ちゃんがそう聞いてきた。


「べ、別に何も無いよ?」

「そう? なら、頭、拭いてあげるわよ」

「う、うん」


 私は頷いて、お姉ちゃんに体を預けた。


「はい、もういいわよ」

「うん」


 お姉ちゃんの言葉に頷いて、タオルを渡してもらった私は、適当に拭いてあった体をちゃんと拭いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る