言えるわけない

「――葉……美葉? 聞いてる?」

「……え、ごめん。何?」


 夏希に呼ばれてたのに気がついた私は、そう聞いた。


「……今日も寝るから、起こしてって言おうとしたんだけど、何かあった?」

「い、いや、な、何も無いよ?」


 夏希に心配されながら、そう聞かれた私は、昨日お姉ちゃんにされたことを話せるわけが無いから、そう答えた。


「……なら、いいけど」

「う、うん」


 夏希はそう言って、机にうつ伏せになった。

 

「心配してくれて、ありがと」

「……ん」

 

 夏希に心配してくれたお礼を言って、私は時間が過ぎるのを待った。

 

 



 そして、チャイムがなった。

 夏希の方を見ると、目を擦りながら、顔を上げていた。

 それを確認した私は、授業の準備をした。


 



 授業が終わって、放課後になった。


「夏希、今日、家来ない?」


 だから、私は夏希にそう聞いた。

 夏希が居いる間は、お姉ちゃんも変なことしてこないと思いし、私も変に意識しなくていいし。


「……行く」

「うん。じゃあ一緒に帰ろ?」

「……ん」


 そうして、私たちは一緒に私の家に向かった。


「……お姉さん、いつ帰るか聞いていい?」

「私たちが家に着いて、二時間後くらいだと思うよ」

「……別に、美葉がくっついてくるのは、温かくていいんだけど、お姉さんが怖いから、帰ってくる頃になったら、やめてよ」

「……う、うん」


 夏希にくっついてたら、また前みたいに、お姉ちゃんに変なことをされるかもしれないけど、諦めてもらいたいから、夏希とイチャイチャしてるフリをしようとしていた私は、目を逸らしながら、頷いた。


「……ほんとに、こんな事言っちゃ悪いんだけど、怖い、から」

「う、うん。……ごめん」


 ……私はそう言って、謝った。……どう考えても、私が悪いと思うし。

 

「いや、いいけど」

「……うん」


 



 そんなやり取りをしながら歩いていると、私の家に着いた。

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