楽しみ

「……ん」


 目を覚ました私は、お姉ちゃんが居ないのを確認すると、ベッドから起き上がった。

 ……お姉ちゃんが、また、キスする、とか変なこと言った後、じたばたするのを辞めた私は、頭を撫でられたりして、別に嫌なわけでも、嬉しいわけでもないのに、心が落ち着いて、すぐに眠りにつけた。……暑かったはずなのに。


 そんなことを考えながら、私は自分の部屋を出て、リビングに向かった。

 

「おはよう、美葉。もう少しで出来るからね」


 リビングに入るなり、お姉ちゃんがキッチンから声をかけてきた。


「……うん。おはよう」


 昨日よりはお姉ちゃんを見ても、変に思い出して意識せずに済んだから、なるべく普通にそう返してソファに座った。


 時間が分かるように適当にテレビをつけて、お姉ちゃんを待っていると、朝ごはんが出来たみたいで、お姉ちゃんが朝ごはんをテーブルに並べてくれた。

 お姉ちゃんに呼ばれて、私はソファから移動した。


「いただきます」


 お姉ちゃんも座ったのを確認してからそう言って、私は朝ごはんを食べ始めた。


「お姉ちゃん、今日も美味しいよ」


 いつも通り美味しいかを聞いてくるだろうと思ったから、私は聞かれる前にそう言った。


「良かったわ」


 お姉ちゃんは嬉しそうにしながらそう言うと、朝ごはんを食べ始めた。

 

「そういえば、私は今日暇よ?」


 朝ごはんを食べていると、お姉ちゃんが急にそんなことを言った。

 学校はあると思うし、学校が終わってからって事だよね? ……だったら私も暇だけど、なんでわざわざ、そんなこと言ってきたんだろう。


「料理、教えて欲しいんでしょ?」

「えっ、あっ! い、いいの!?」

「ふふっ、もちろんよ。その代わり、ちゃんと食べさせてね?」

「う、うん!」


 元からそのつもりだし、他に食べさせる人なんていないから、素直に頷いた。

 あ、でも、夏希ならいるかも。


 一瞬頭に夏希の顔が浮かんだけど、直ぐに消えた。

 だって、夏希は食べることより寝ることの方が好きそうだし。

 

「美葉は今日、何か食べたいものとかある?」

「……ハンバーグ?」

「美葉が食べたいなら、私はもちろんいいけど……この前と同じような感じになるわよ?」

「た、確かに……だ、だったら、オムライス、とか?」

「ふふっ、分かったわ」


 私は今から夜が楽しみになりながら、朝ごはんを食べ終えた。

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