早く時間が過ぎて欲しい

「美葉、またね」

「うん。また」


 学校がやっと終わったから、夏希に挨拶をして別れた。

 いつもだったら、夏希を遊びに誘うかもしれないけど、今日はお姉ちゃんに料理を教えて貰える日だから。……まぁ、仮に誘ってたとしても、今日は私の家には来てくれなかっただろうけど。……昨日のことがあるしね。……い、いや、昨日なんて何も無かった。き、キスなんてしてないんだから!


 自分で余計なことを考えてしまいそうなのを我慢しながら、私は家に帰った。

 

「ただいま」


 家に帰ってすぐにそう言ったけど、当然お姉ちゃんはまだ学校だから、何も返事は帰ってこない。

 リビングでテレビでも見て、お姉ちゃんを待ってようかな。




 そう思ってテレビを見ていると、すぐに時間が過ぎて、お姉ちゃんが帰ってきた。


「ただいま、美葉」

「おかえり、お姉ちゃん」


 お姉ちゃんにそう返すと、お姉ちゃんは私の隣に座ってきた。


「いつ作るの?」

「まだ、お米を炊き出してすらないから、もう少ししたらね」

「まだ炊かないの?」


 私は少しでも早くお姉ちゃんに教えて貰いたくて、そう聞いた。


「いつもならもうちょっと後なんだけど、今日は早めに炊くわね」

「うん!」


 笑顔で頷くと、お姉ちゃんは微笑ましいものを見るように笑いながら、お米を炊きにキッチンに行った。

 そして、すぐに戻って来て、私の隣に座った。


「お米が炊けるまでは、テレビでも一緒に見よっか」

「うん」


 お姉ちゃんの言葉に頷くと、お姉ちゃんは更に私にくっついてきた。

 それだけなら良かったんだけど、お姉ちゃんは私の事を少し持ち上げて、膝の上に座らせてきた。


「な、何やってるの」


 私がすぐに立ち上がろうとすると、両手で私を抱きしめて、逃げられないようにしてきた。

 

「これくらい、普通でしょ?」

「そ、れは……そう、かも……」


 そう言われてみればただくっついてるだけだし、別に逃げるようなことじゃないのかも。……い、いや、やっぱりだめだ。これを受け入れたら、私がお姉ちゃんの事をそういう意味で好きだって勘違いしちゃう。……それに、単純に暑いし。


「は、離してよ」


 お姉ちゃんはそんな私の言葉を無視して、頭を撫で始めた。


「料理を教える代金みたいなものよ」

「そ、そんなの聞いてないし」

「ふふっ、冗談よ。これはただ私がこうしたいからしてるだけよ」

「だ、だったら、尚更離してよ!」


 そう言っても、お姉ちゃんは話してくれずに、ただ時間だけが過ぎていった。全然テレビに集中出来ずに。

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