ノーカウントでしょ!

「お、おね……へ? い、今……」

「したわね。キス」


 お姉ちゃんに改めてそう言われた私は、嫌でも理解させられた。……本当にキスされたんだって。

 ただでさえ熱かった私の顔が、更に熱くなったことが分かる。

 

「美葉、私は夜ご飯の準備があるから、そろそろ行くわね」

「……え、あ、え?」


 何を言えばいいかが分からない私をベッドに残して、お姉ちゃんは私の部屋から出て行った。

 

 わ、私、お姉ちゃんと……き、キス、しちゃった。……い、いや、しちゃったって言うか、お、お姉ちゃんが無理やりしてきただけだし! ノーカウントでしょ! わ、私はキスなんてしてない。まだ、キスなんてしたことない!


 そう自分に言い訳して、私は更に現実逃避するために机からノートを取り出して、勉強をすることにした。

 




 そんな現実逃避の勉強をしていると、お姉ちゃんが扉をノックして入ってきた。


「な、な、何、お、お姉ちゃん」

「ふふっ、美葉、どうしたの? そんなに動揺しちゃって」

「し、し、してないし!」


 せっかく現実逃避してたのに、お姉ちゃんが入ってきたことで、さっきのことを思い出しちゃって、上手く滑舌が回らない。


「そ、そんなことより、な、なんの用?」

「今、米を炊いてるから、一緒にお風呂に入ろうと思ってね」


 お、お風呂……ただでさえ、お姉ちゃんを見るだけで、さっきのことを意識しちゃうのに、今、お姉ちゃんと一緒にお風呂なんか入ったら、もっとさっきのことを意識しちゃう。


「き、今日は一人で入りたいな……」


 だから、そう言った。


「だめに決まってるでしょ? 昨日、今日だけって約束で、一人でお風呂に入ったでしょ?」

「そ、それはそうだけど……」


 だって、今日、こんなことになるなんて思ってもなかったし……

 お、お姉ちゃんにこんなことされるって分かってたら、き、今日一人で入るって言ってたし……

 そんなことを思ったところで、時間が巻きもどる訳でもないのは分かってるけど、思わずにはいられない。


「まぁ、美葉がどうしても、私を意識しちゃって、今日も一人で入りたいって言うなら、本当に今日だけなら、いいけどね?」

「そ、そんな訳ないでしょ! い、一緒に入るし!」

「そう? だったら、早く入りましょ」

「あ、いや――」


 お姉ちゃんは私に有無を言わさずに、お風呂場に私を連れて行った。

 私は、思わず言ってしまったことを後悔しながら、お姉ちゃんに急かされて服を脱いだ。

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