私もほんのちょっとだけ……

 お姉ちゃんはご飯を食べ終わると、やっぱりソファに来た。

 お姉ちゃんが来たのを確認した私は、寝転んでたのをやめてソファに座った。


「ありがと、美葉」

「……うん」


 お姉ちゃんはそう言って、私の隣に座った。……肩と肩がくっつく位の距離感で。


「お姉ちゃん、暑いよ」


 この前はアイスを食べてたから良かったけど、今はアイスを食べてないし、普通に暑い。

 だから、私はお姉ちゃんから少し離れたんだけど、お姉ちゃんは離れた分だけ距離を縮めてくる。


「お姉ちゃんは暑くないの?」


 私は思わずそんなことを聞いた。

 だって、私はこんなに暑いのに、お姉ちゃんはそれを構わずに距離を縮めてくるから、お姉ちゃんは暑くないのかと思って。


「私も暑いけど、美葉とくっついてる方が幸せなのよ」

「い、意味わかんないし!」


 暑いなら、離れたらいいのに。

 いや、私もほんのちょっとだけ、ほんとにちょっとだけお姉ちゃんとくっついてるのは幸せ……やっぱり違う! 普通に暑いし! 

 

 危うく受け入れそうになるのを我慢して、私はお姉ちゃんからまた離れる。

 ただ、やっぱりお姉ちゃんは距離を縮めてくるから、とうとうソファの端まで追いやられてしまった。

 ……お姉ちゃんを向こう側に押すことも出来るかもしれないけど、もし、それで怪我でもしちゃったら、後悔してもしきれないから、そんなことはしない。


「お、お姉ちゃん、お風呂! お風呂入ってきたら?」

「……それもそうね。私も一人で入るのは始めてだし、美葉みたいに寂しい思いをしてくるわ」


 あ、そっか。……私が始めて一人でお風呂に入るってことは、お姉ちゃんも始めて一人でお風呂に入るってことなんだ。……いつも一緒に入ってたから。

 い、いや! 始めて入るのはともかく、寂しい思いなんてしてないし!

 私がそれをお姉ちゃんに言おうとした頃には、もうお姉ちゃんはリビングから出て行っていた。


 ……お姉ちゃんがお風呂に入りに行ったし、私は自分の部屋に行ってようかな。……テレビを見るならお姉ちゃんと見たいし。

 

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