料理

「お姉ちゃん、上がったよ」

 

 お風呂を上がった私は、お姉ちゃんにそう言った。

 一人で入る始めてのお風呂だったけど……いつもより、広かった。……それと、お姉ちゃんがいなかった。……いや、当たり前の事だけどさ。……一人で入ったんだから。


「ちょうど、今出来上がったところよ」

「……うん」

「美葉? どうしたの? 元気がないみたいだけど」

「べ、別に普通だし! そんなことより、お箸持っていくから!」


 そう言って、私とお姉ちゃんのお箸を持ってテーブルに向かった。

 

 




「美葉、美味しい?」

「美味しいよ」

「良かったわ」


 お姉ちゃんは私の言葉を聞くと、嬉しそうに微笑んだ。

 いつも美味しいって言ってるのに、お姉ちゃんは私の美味しいって言葉を聞くと、いつも喜んでくれる。

 ……慣れたりしないのかな。……もしかして、私もご飯を作ったりしたら、お姉ちゃんの気持ちが分かるのかな。


「ねぇ、お姉ちゃん」

「どうしたの? 美葉」

「……今度の休みにさ、私に料理を教えて欲しいの」


 そう思った私は、お姉ちゃんにそう言った。


「お、お姉ちゃんも忙しいと思うから、ほんとに暇な時でいいから!」

「それはもちろん構わないけど、誰に料理するの?」


 そう聞かれた私は、特に深く考えずに、答えた。


「? お姉ちゃんだけど」


 逆に、お姉ちゃん以外に誰に食べさせるの?


「ふふっ、良かったわ」


 お姉ちゃんは私の言葉を聞くと、嬉しそうに笑みを漏らしていた。

 

 最初はなんでお姉ちゃんがそんなに嬉しそうなのか分からなかったけど、すぐに理解した。

 ……もしかして、お姉ちゃんの事を私が恋愛的に好きになると期待しちゃってる!? ……すぐに否定しなきゃだめ、なんだけど……お姉ちゃんのあんな嬉しそうな顔を見たら、言えないよ。





「ご馳走様」


 手を合わせてそう言った私は、食器を台所に持って行ってから、ソファに座った。

 お姉ちゃんはまだ食べているから、私はソファに寝転んだ。

 もちろんお姉ちゃんが食べたら、一緒に隣同士で座るつもりだ。……別に私がお姉ちゃんと隣同士に座りたいわけじゃないけど、どうせいつもみたいにお姉ちゃんは私の隣に座ってくるだろうから。

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