四年もやってれば流石に才能が無いことくらい理解してる話

 リアルにも俺が小説を書いてることを知ってる奴が何人かいるのですが、そいつらは口を揃えてこう言います。



「お前の書く話はつまらんけど続けられるのが凄い」



 しかし、実は言うほど続けているワケでもないです。書きながら自分で「これつまんねぇな」と思った作品は見切りつけて削除してますし、俺は普通に人からの評価を気にするタイプなので、うっかりポイントを見ちゃって萎えて削除することもありますから。



 自分のネタ帳を開き、クソつまらなそうなアイデアの羅列を見ると辟易とします。マジでため息が出るし、アラサーにもなって黒歴史を増産していることにも嫌気が差します。



 過去に書いたモノは、タイトルを読むだけで吐き気がするくらい臭いです。人気者をガワだけパクった中途半端な長文タイトルなので、吹っ切れていない感が羞恥を呼んでいるんだと思います。



 そして、やはり俺には才能が無いなぁと沁み沁み感じるのです。



 人と比べることに意味が無いとはいえ、俺と同時期に投稿し始めた人、俺よりもずっとあとに投稿し始めた人。そういう人たちのランキング席巻や書籍化報告を目にするたびに、指を咥えて羨むことしか出来ない自分が嫌になります。



 苦しいです。



 学生時代、本気でキックボクシングをやっていた時も同じことで悩んでいたのを覚えています。高校一年からずっと頑張ってやっとプロの試合に出て、しかし大して勝てずに心が折れてグローブを捨てました。



 仕事や恋愛も似たようなモノです。他の人が上手くやれてるのを見て、そこから何かを学ぼうとしても、自分の実力の無さに幻滅して心を折ります。人生において、俺は一度も確かな勝利を手にしたことが無いです。努力が報われた実感が無いので、自信を失っていくのです。



 そして、今。



 俺は、多分そういう時期に差し掛かっています。この『小説を書く』という趣味も、心が折れる瀬戸際にいるんだと実感してます。最近は、自分の書いているモノが面白くないです。内容が面白くないので続きが気になりませんから、書くのも当然つまらないということなのです。



 四年間ですよ、四年間。



 この四年間、俺は一度も勝っていません。勝負の舞台には上がったと自覚する瞬間もありましたが、すぐに淘汰されて何も残りませんでした。



 特に、人に認めてもらう趣味は、自分が分かっていることと分からないことの境界が曖昧です。才能が無いことは理解している。けれど、その差を何で埋めればいいのかは分からない。頑張り方が分からないから、目標が定まらず悩みにばかり意識が向いてしまう。こういうのって、あるあるだと思います。



 そして、そういう掴みどころのない苦しみがジワジワと心を侵していく状況が嫌になって、人の心は折れるんだと俺は考えます。多分、分かりやすい逆境や苦難はキッカケに過ぎず、本当にやめてしまう理由というのは自分への深い絶望なのでしょう。



 実際、俺はボコスカに負けて顔面の骨が折れても、しばらくはキックボクシングを続けてましたから。弱くても好きなら続けられる。逆説的に言うのなら、好きじゃなくなるから続けられなくなるのです。



 これって、どことなく恋愛に似てるように思います。



 相手に愛想を尽かす理由って、一つの間違いではなくて改善が行われずダメなままでいるせいですから。嫌いになるたびに一つずつ削って、興味という名の砂の山がいつか砂粒になってしまえば、もう救うモノもなくなってしまうワケです。



 そして、自分の実体験と知識を擬人化して描けるモノといえば、なるほど、俺が恋愛小説ばかり書いている理由もきっとそこにあるのでしょう。



 だって、実際の俺は恋愛なんてほとんど知りませんもん。モテないし、フラレてばっかでいい思い出になった恋もありませんから、経験則だってあてになりませんし、特筆するほど優れた相手を恋人に持ったこともありませんから、アイデアのネタに出来るモノもありません。



 ならば、それでも恋愛成就という最も分かりやすい報われ方をするラブコメに思いを馳せる理由を考えてみれば、それは俺は単純に報われたいと思っているからなのです。決して、女の子とイチャイチャしたい願望があるワケではなく、追体験によって得たいのは物事の成功なのですよ。



 報われたい。人に認められたい。けれど、そのための実力が無い。才能が無いから、自分への興味も無くなって、何も得られぬまま終わってしまう。失敗体験だけがまた増えて、更に自分を嫌いになる。これが、怠惰な凡人の末路というモノなのでしょうな。



 ……まぁ、本当はちょっぴり、女の人とイチャイチャしたいという欲求もありますけど。



 そんなワケで、自分の才能の無さに絶望しかけている話でした。



 最後になりますが、これは俺の話であるということを留意してください。俺は頭が悪いので、成功者のやり方を真似ることも出来ずこうなってしまいましたが。何も、才能か無いから絶対に無理だと言っているワケではありません。



 努力で成り上がる人もいると思います。最初はダメダメでも、長い時間か、はたまた効率的な方法を選び、しっかりと報われる形を手に入れる人もいると思います。そういう人の存在を否定するようなエッセイではないので、小説を書くのが好きな人は頑張ってみて下さい。



 もちろん、成り上がるまで努力出来ることもまた、その人の才能なんだろうと俺は思ってしまいますが。

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