【閲覧注意】なろう読者は日本の終末論者である【閲覧注意】

 年明け一発目から危険な意見を発信するなよ、というツッコミを入れつつ。



 今回はそれ以上でもそれ以下でもない結論を既にタイトルに出しているので、ざっくりな予備知識から述べさせてもらいましょ。



 終末論とは、歴史にも必ず終わりがあるよね的な思想であり、終末論者とは世界が終わるのは明日なんじゃないかと信じることです。



 反義には目的論というモノがあります。これは、カントという昔の哲学好きなおっさんが「人って目的を達成することで存在を証明出来るよね」的なことを説いたことで生まれた思想です。それと対になるように、終末論は「明日終わるなら何もしなくていいよね」的なことを説きます。



 要するに、「この世界は諸行無常なんかではないよ」という釈迦に真っ向から喧嘩を売るが如く思想が終末論というワケです。詳しく知りたかったら小川国夫の『聖書と終末論』を読めばいいと思います。



 まぁ、この説明の時点で察しの良い読者はピンと来ていることかと思いますが、念の為にもう少しだけ説明をさせて欲しいです。意見をより強固なモノにするには説明が不可欠だから仕方ないのですよ。



 個人的に、GDPも成長率も先進国中ワーストクラスにも関わらず、犯罪は控え目でデモも起こらずインフラと医療が抜群で電車が時間通りに来る平和な日本という国は、歯止めの効かなくなった資本主義に対するアンチテーゼとして一つの答えを示せているのではないかと思います。



 世界最強を地で行くアメリカやライバルの中国には、四則演算どころか字も読めない人がたくさんいます。無能一つ比べても、日本とはスケールの違う人間が跋扈しているのが現実です。



 とにかく教育が行き届いていないのです。識字率なんかを少し調べれば何となくその背景を知れます。ただ、その話をすると日本語の難解さのせいで識字率は割と低めだったりしますが。



 少なくとも、ひらがなは分かるでしょう。実際、そういう情報伝達が優れているからこそ、日本はオタク大国となり得たのでしょうし。



 ……おや、俺の意見の根拠が見え隠れし始めました。



 というワケで、本編。



 先ほど例に出したアメリカではヤングホームレスが、中国では寝そべり族が社会問題となっています。有名な話ではありますが、超高学歴から生まれの恵まれない者まで、多くの若者が「何もしない」という選択をしているのです。



 しかしながら、日本ではそうはなりません。何故なら、みんなそれなりに頭がよく、それなりに働き口が用意されているからです。一般人の理性の強さが他国と段違いなのですよ。



 ……そうは見えない? 本当に? もう少し、見る人間の種類を変えてみたらどう?



 そんな、何もかもがそれなりに揃っている日本で落ちこぼれた時、果たして人はどうなるでしょうか。



 基本的には、アメリカや中国のように悪者になる以外ないほど追い詰めらることはないワケですから、とりあえず生きてはいられます。

 しかし、逆に言えばレジスタンスのようなグループ(ギャングとか)もないので自分の意見を言える場所なんかは減ります。ただ生きているだけ、というのは日本特有の落ちこぼれ方なんだと俺は思います。



 そんな、寂しくて辛くて苦しくて仕方ない状況に陥った時、もはや自分の人生に価値を感じられなくなったとき、人は終末論を信仰するワケです。世界の歴史が終わって、今までに積み重ねてきたモノがすべてパーになることを望むワケです。



 ……ここまで言えば、俺のエッセイなどを読みに来る酔狂で知見の広い読者諸君は、俺が何を言いたいのか分かったでしょう。



 要するに、なろう(ここではネット小説の総称と捉えてください)で流行っている『異世界転生』だの『婚約破棄』だの『ざまぁ』だの『やり直し』だのは、すべてがポストアポカリプスなワケです。



 何も積み重ねて来なかった者が縋れるのは、世界の終わりしかないワケです。形が違うだけで、弱者が最後に辿り着くのは終末論なんですよ。中途半端に頭がいい日本人だからこそ、物語である『なろう小説』なんですよ。



 ここ、今日のフックです。中途半端に頭のいい人向けの終末論。それが『なろう小説』なのです。



 だって、それこそ『もう遅い!』じゃないですか。30代とか40代になって、彼女も友達もいなくて、けれどそんな関係を構築している暇もないくらい好きなモノとか努力したモノとかなくて。



 そんな人が、頭脳どころか身体的にもそろそろ厳しくなり始める連中が、「さぁ、今から現世で頑張ろう」とはならないですよね。むしろ、「今までもずっとダメだったから今回もダメだろう」と始める前に諦めることでしょう。



 むしろ、そんなふうに諦めるための「そもそも」がない可能性すらあるでしょう。



 そうでしょう? だって、そうじゃないとおかしいでしょう? いきなり知らない場所へ生活圏を変えて、降って入ったようなチート能力で周囲を見下しまくって、なんの思い入れもないヒロインを侍らせて、挙句の果てに自分を評価しなかった、自分を捨てた連中に仕返しって。



 それって、世界が終わることと一体何が違うんですか?



 じゃあ逆に聞きますけど、あなた自身はあなたみたいな人間を組織に所属させたままにするんですか? 誰の目にも映らない謎の功績を振りかざしたり、或いは社会性もキャリアもポテンシャルの片鱗も見えないようなワケのわからない人材をそのままにしておくんですか? 本当に、あなたを追放したり勘当したり婚約破棄をした相手は悪い人なんですか? 整合性が取れてないのは、むしろ主人公サイドなんじゃないですか? 主人公の周りにいるのは本当に人間なんですか?



 ……とはなりません。少なくとも、俺はね。



 ようは、そう考えるしかないから終末論にハマってるワケで。だったらもう放っておいてあげましょうよ。それくらい、そんな都合の良い世界しか好きになれない価値観を持ってしまうような人生をその人が歩いてしまっただけで、別に俺たちには関係ないじゃないですか。



 だったら、人が何を好きになろうが自由でしょう。商業化してお金を稼いだとしても、別に好きな人は好きなままでいいです。確かに、目につくだけでクソムカつくような作品もたくさんあるでしょうが、逆に言えばその人たちから見ればまともな作品のほうがムカつくでしょうし。



 だから、釣り合いを取るためにそっちサイドにも言わせてもらいますけど。



 きっと、あなたは積み上げてるんじゃないでしょうか。もしかすると誰にも読まれない小説を書いていて、だから頭の悪い読者を多少頭のいいあなたは見下したり蔑んだり、或いは「なんでこれが書籍化できて俺は無理なんだよ」なんて思ったりしているんじゃないですか?



 実際、俺がネット小説に疎くようつべでなろうのトレンドを探ろうとしていた頃から、結構キツめの言葉を使うクソラノベレビューが乱立していました。多分、今もあると思います。



 そして、その動画のコメント欄に嬉々として「作者も読者もバカ」だの「登場人物は作者の知能を超えられない」だの「山も落ちも意味もないクッソつまんねぇ激物」だの。本当に散々な言われようだったのを覚えています。



 しかし、同じなんですよ。



 それをいうあなたも低能なコメントを晒して自分のアピールしちゃってるんですよ。「言ってるお前らもバカを見下してる時点で同じ穴のムジナだけどね」って、「こういう冷笑的な意見をわざわざコメントする奴ってFラン大学就職チャンネルとか好きそう」って、冷静な普通の人は思っちゃうんですよ。



 賢者の威を借りて頭悪い奴を否定して賢くなった気になってんじゃねぇよ、バーカ(笑)



 なんて、そんなことを言われた時、果たしてあなたは自分の言葉で意見を言えますか? それがルサンチマンの産物ではなく、本当の意味で人に知らせるための言葉だと言えるんですか?



 なので、もう少し考えてから作品や読者を批判しましょう。頭のいい人は、決して自分を賢者だと名乗らないモノです。



 まとめに入りますが、俺は現代のアポカリプス信仰に対するオタク大国の日本らしい終末論の提起だと思ってます。努力したって無駄、すべてが才能と運なのだと諦めた人たちの素晴らしい表現だと感じています。八百万の神がいる国なのですから、色んなパターンの聖書が生まれていると思いましょう。



 尤も、俺は多くの聖書があるように見せて、実は作者の伝聞が違うだけの全く同じ内容が何冊も刷られていることの方が問題だと思いますが。



 俺が言いたいのは、読者は悪くねぇってことです。金や時間を使ってクソつまらん思いをさせられたのなら、幾らでも作者と作品を貶し尽くせばいいと思います。



 でも、それを好きな人を批判するのはやめましょう。あなたは、その人のことを何も知らないハズですから。



 ……ところで。



 俺は賢者どころか圧倒的に積み重ねていない弱者なので、勝ち組に対しても同じ立場にいる奴に対しても言いたい放題です。それくらいが、負け組的にはちょうどいいでしょう。



 嫌いなモノを大嫌いだと声高らかに叫ぶことが、なんの背景もない俺に許された表現なんだと思ってますし、これからもそんな文章ばっかり書くと思います。



 随分とアクの強いことですが、それでもよかったら今年もよろしくお願いします。



 最後になりますが、あけましておめでとうございました。

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