非モテ男がモテない理由を詳しく語るエッセイ

 基本的に、モテない男というのは何事にも遠慮しがちです。



 出来る限り相手を楽しませようとしたり、気を遣って相手を守ってみたり、何だかんだ言って飯を奢ってみたりするものの、その全てに自信を感じない仕草が見え隠れしています。



 というか、セックスに誘わないです。男なんてどーせセックスがしたいくせに、ちっとも誘ってこないスタンスが逆に気持ち悪いです。



 よくある話、ヤンキー的な男がモテるのは自分に自信があるからだといいます。つまり、女は自信のない男が大嫌いであり、相手の意見を伺って「よかったら〇〇しませんか?」なんていう女主体の誘い文句に辟易してしまうのです。



 こいつといても退屈しそう。こいつといても守ってもらえなさそう。あらゆる部分から異性を感じさせないオーラを漂わせ、ならば他にもカレシ候補はいるのだから、わざわざお前を選ぶ必要がないということで連絡すらまばらになっていくのです。



 もっとガツガツしたまえよ、軟弱男子。なんて、ある程度の経験を経た女たちはみんな思っているのですよ。



 そもそも、女なんてどうせ寝起きはブサイクだし、くっせぇうんこもするし、肌も荒れるし、悪口だって言うし、下品に馬鹿笑いしたいときだってあるし、つーか女らしさとかあいつら自身が分かってねぇしで。連中も同じ人間で、つまりはいい男とイイコトしたい欲求も当たり前にあるワケですから。



 あんまり理想を押し付けて神格化して、『女とはこうあるべき』的な思想をリアルに持ち込むのはやめましょう。そういうのは二次元の中にしかいませんから。あなたの大好きなキャラクターは、あなたの性癖をとってもよく理解したキモいおじさんが作り出してますから。



 そのへんのことを理解しておけよな!



 ……というのは些末な理由で、実を言えばモテない男の本質的な問題はそこではないです。モテない男は、キモいからモテないワケではないです。モテない男は、ブサイクだからモテないワケではないです。



 理由はただ一つ。モテない男は、女のいる環境に身を置いていないからモテないのです。



 ここまでが前提です。もしもこんなエッセイを読みに来る酔狂な女の人がいるのなら、ひと手間ではありますが文中の『女』と『男』を逆に読んでください。



 俺はたまたま男なので男目線で話しますが、両性に通用する話となっています。そして、フェミニストでもミソジニーでも性的少数者でもありません。ただ、普通にモテない一般的なアラサー男です。



 つまり、読者の思想をコントロールしようとする意図はありません。いつも通り、弱男のリアルでは口にできない思いの丈を連連と書いているだけの、便所に唾棄すべき痰カスであることを留意しておいてください。



 以下本編。



 世の中には、弱者男性と同じくらいの数の弱者女性がいるわけで。美人より遥かに多くのブサイクがいるわけで。才女とは比較にならない数のバカ女が存在しているワケで。



 そして、大抵はみんなそれを自覚しています。大したことのない男が、自分が大したことないと分かっているのと同じくらい、大したことのない女も自分のことを大したことないと思っています。



 けれど、世の中には女はヤベー生き物であるという意見がまことしやかに囁かれています。なぜでしょう。



 なんて、考える必要はないです。



 どうせ、そんな荒唐無稽な意見を主張する男のリアルの女の情報源は、マッチングアプリと風俗とキャバクラと、あとはキチママ速報とYouTubeの勘違い女まとめくらいですから。



 それでは、認知に歪みが発生するのは当然のことです。たまたま人間と同じ形をしているだけの下品で意地汚くて低能な謎の生物を女性のベンチマークにするのは、女性に対して非常に失礼です。絶対にやめましょう。



 ……ただ、そうは言っても実際に存在してしまっているのもまた事実。



 そして、樽いっぱいの上質なワインに一滴の汚水を垂らすとそのワインは樽いっぱいの汚水になるが如く。世の中にどれだけたくさんの優しい女の人がいたとしても、少数のカスが混入しているだけでモテない男にとっては女の人が世界中に溢れたカスになってしまいます。



 これが、男の恋活的、或いは婚活的なサムシングに参加しない理由。引いては、避け続けていつの間にかコミュ力も低下して、めでたく非モテの弱男が生まれるメカニズムなワケです。



 何ともタチの悪いことに、あの化け物は見た目では判断出来ませんから、ネガティブな男はすべてと距離を取らざるを得ないワケです。しかも、現代には一人でも余暇を満喫出来るコンテンツが充実してしまっているため、仕事や学業に疲れた人々は引きこもってしまうワケです。



 これでは、非モテになるのも当然のことです。非モテ男とは、リスクヘッジを徹底した安寧思考の極地だったワケです。



 ……しかしながら。



 基本的に、俺は他責思考のクズが大嫌いです。なんの能力もないくせにプライドだけが高く、自分の過ちをすべて人になすりつけて自分はいい奴ぶる態度を心から軽蔑しています。



 にも関わらず、これではまるで非モテ男(俺)が気色の悪いゲボカス肉便器のせいでモテないと言っているようなモノです。俺自身が俺の大嫌いな人間になるのはよろしくない展開です。



 なので、モテない男がなぜ女の人のいるコミュニティに参加しないのか、今度はもう少し主観的な解説をしましょう。どちらも等しく貶すことで、一方に肩入れせず正しい答えを導くことが出来るというモノです。



 ……まぁ、能書きはさておき。



 これを言っては元も子もないのですが、単純にセックスしたいと思ってないからというのが一つの理由だと思われます。このエッセイの前提を全否定です。



 ケンドーコバヤシ曰く『女は嫌いだけど女体が好き』だそうですが、ハッキリ言ってこれはモテる男の理論です。非モテ男は、基本的にカノジョがいればセックスする程度の性欲しかない男性的な欠陥を備えている可能性が高いです。



 逆に言えば、カノジョがいないなら別にセックスしたいと思わないのです。風俗に行ったらどうせ虚しくなるだろうし、かと言って素人の子を口説くにも動くのが面倒くさいしで、結局休みの日も出かけることなくソロプレイを楽しむのです。



 オナニーはします。しかし、女を抱きたくなるほどの性欲は溜まりません。性欲を貯める欲望の器も、そこに流れる液体のような感情も、非モテは一般人に全く足りていないのです。



 もっと言えば、死ぬほど女を好きになったことのない心スッカラポンの悲しい生き物なのです。これ、今日のフックです。マジで悲しいことですね。



 非モテとは、つまるところ恋愛を知らない人種なのです。そりゃ、知らないモノを欲しがることは出来ません。世界の何処かに存在するかもしれない、自分の舌に完璧にマッチする大好物も味わったことがなければ欲しがれないのと同じです。



 なら、なぜ恋愛を知らないかと言えば他人に興味がないからであり、なぜ他人に興味がないかと言えば他人の大切さを知らないからであり、なぜ他人の大切さを知らないかと言えばコミュニティに所属していないからであり。



 こうして、まるでメビウスの輪のように非モテの理由に繋がり、すべてが上手くいかない悪循環が発生するワケです。



 もちろん、形而上学的な観点も忘れてはいけません。冷静に考えてみると、非モテでも普通に生きていけるこの世界でわざわざ欲しがっていないカノジョを手に入れる努力が面倒くさいという当然の悩みもありつつ。



 しかし、どう見たって世の中のカップルは幸せそうで羨ましいし、そもそも多くの場合は両親が結婚しなければ自分という人格はこの世に存在しなかったワケで。ならば、自分だって少しはイチャイチャしてみたかったり、寂しときによりかかりたかったり、逆に助けてみたかったりする時もたまにあります。



 嘘です。『たまに』じゃなくて『割と』です。具体的に言えば、一週間に一回くらいは寂しくなります。



 何より、普通の人たちは普通に見つけているパートナーを自分だけが見つけられていないという劣等感が心を黒く侵食していくような気がして。けれど、似た者を探せばソロプレイヤーなんて世の中にはいくらでもいることを知って安心して。



 これが現代の日本男児だ、とうことで。『みんな寂しいのなら僕も我慢できるね』的なマインドになるワケです。



 とか言いながら、もしもラッキーが訪れたらとっとと恋人を作ってソロ仲間を裏切る準備は出来ている、というブルータス的な心構えもあるという。決して、恋人が欲しくないワケではない。あくまで、その努力をするのが嫌すぎるだけなのだ、的な。



 非モテ男は、その多くが常にこんな感じのことを考えています。頭でっかちで根拠のない自信を持っていない、窮屈で生き辛さを覚える脆弱な心を必死に押さえつけて常世を跋扈するゾンビ。



 極論、努力をして傷付きたくないから非モテなのです。非モテとは、怠け者で人と関わることが苦手な社会的弱者に押印される呪いなのです。だから、何だかんだ言いつつも未だに良い歳こいた未婚者は変人扱いされるワケです。



 ……こんな感じで、いくらでも理屈はくっつけられます。例え、それがS極とN極のように正反対のモノでもね。



 今回は、ただ被モテ男の特徴を詳しく語るだけのエッセイなので結論などないのですが。それでも無理矢理にこじつけるのだとすれば、非モテは一人の時間が多いからこんな感じの思考遊びが得意な可能性が高い、といったところでしょうか。



 これも、タイトル通り立派な非モテ男の特徴です。などと、日夜脳内にアナザーワールドを展開する怠惰な俺は自らを憐れみつつ愚考しているのでした。



 高望みをしない、相手をリスペクトする、誠心誠意思いを伝える。この三つさえ守れれば恐らくはパートナーも出来るハズなので、もしも独りに耐えきれなくなった人は自分に見合ったコミュニティで上記三つを実践してみてください。



 もちろん、今の俺にはそんな元気などないですけどね。



 あぁ、怠惰怠惰。

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