第3話 魔獣バトル!

「離せぇえええええええええ!!」


 大きな声で叫んだのはギルドランキング722位のジャルザだった。

 S級モンスター、グレイテストゴーレムに捕まってしまったのだ。


 え!? どうしてあんな所にゴーレムが!?


 首を振ると、後ろに1体。前にもう1体見えた。


「2体かよ!?」


 絶望的だ!


「離せ! 離せぇえええ!! メガファイヤーー!!」


 ジャルザは炎の魔法をゴーレムに放つも、傷一つ付けることはできなかった。

 そのまま、


バクン!!


 うわぁ……。

 た、食べられちゃった……。


「グレイテストゴーレムは人間が大好物。この村の人々は奴の餌なのです!」


 そう語るのはエルフのお姉さん。


「奴の弱点はないのですか!?」


「わ、私は旅をしていてたまたま遭遇してしまいました。百位以内チェンターなら倒せると聞いたことがあります」


 ギルドランキング百位以内の冒険者か。


「あわわわわ……」


「ねぇ、おっちゃん! この村に百位以内チェンターはいないの!?」


「い、い、いるわけねぇだろ! 最強のジャルザが負けちまったんだぞ! 逃げても食われるんだ! 終わりだよぉおおお!!」


 そ、そんなぁ……。

 せっかく、元気な体を手に入れて異世界に転移できたのにさ。こんな所で終わるなんて……。


『キシャーー!!』


 トカゲのククは尻尾を立てて威嚇していた。


 スライムより弱いおまえが勝てるわけないよ。

 最前の方法はなんだろう?

 逃げても捕まるしな。


 そうだ。

 この小さなククなら上手く逃げれるかもしれないぞ。

 俺が囮になってククだけでも助けてあげよう。


「おまえはお逃げ」


 ククは首を振った。


「嫌嫌じゃないって。それが最前な方法なんだからさ。2人が食べられることはないよ」


『クック! クック!』


「おまえだけでも助かればさ。俺がこの世界に来た意味があるんだから」


 ククは身振り手振りで俺に何かを伝えようと動き回る。


 なんだろう、この動き?


『クック! クク! クケケケ!!』


 トカゲは、その小さな両手をパチンと合わせて見せた。


 なんだろう?

 まるで、俺の手を合わせろって言ってるみたいだぞ。


「あ、なんだこれ?」


 俺の手の甲が光っていた。

 右手が鍵で左手が錠前の模様だ。


『クック! クク!!』


「こ、この絵を合わせろっていうのか?」


 つまり……。両手の甲と甲を合わせるっと。

 うわぁ!!


 突然、女性のアナウンスが聞こえる。



『ロックリザードの 封印錠ロックを解除しますか?』



 な、なんだこれ?

 ロ、ロックリザード!?


 ククは自分のことを指して笑う。


『ククク』


「ロックリザードっておまえのこと?」


 みんなはプチトカゲって言ってたような気がするけど……。

 んで、


「この 封印錠ロックってなんだ?」


ズシィーーーーン!!


 凄まじい地響きが響いたかと思うと、眼前には30メートルを超える、グレイテストゴーレムの姿が立っていた。

 その巨大な手が俺たちを掴もうと伸びる。


 か、考えてる暇なんかない!


「わ、わかったよ! なんだかわかんないけどさ!  封印錠ロックを解除してやるよ!!」


『クゥーー!』


 途端に強烈な光がククから発せられる。


「眩しいっ!!」


 眼前に現れたのは輝くドラゴンだった。

 その大きさはグレイテストゴーレムに匹敵するほどである。


「えええええええ!? どこからぁ!?」


 ドラゴンは大きな尻尾でゴーレムを吹っ飛ばした。


「すげぇえええ!!」


 味方なのかな!?


 しかし、その疑問はドラゴンの視線で解決する。

 俺を見つめる大きく円な瞳。その愛くるしさは、


「おまえ……ククか?」


『クゥーーーー!』


 うわぁああ!!

 本当にククだ!!


「カ、カイゼルドラゴン……」


 え?

 なんだって?


 エルフのお姉さんはククを見て震えていた。


「で、伝説の竜……。カイゼルドラゴンです」


 おお!

 なんかすごいな。

 

 じゃあ、 封印錠ロックってのは竜をトカゲの姿に封印していたってことかもしれないな。

 つまり、俺がその封印を解いた。


 左手の甲に描かれいる錠前を見る。


「開いているな……」


 これって封印が解かれたって意味かもな。


 鍵の模様だった右手の甲には竜の顔が描かれる。そこから『ククーー!』とククの声が聞こえた。


 どうやら、この甲の絵はスマホみたいにククと繋がってるみたいだな。


 あとは簡単か。

 俺は魔獣使いだからな。

 この甲に向かって命令すればいいだけだ。


「クク! グレテストゴーレムに攻撃だ!」


『クゥーーーー!!』


 ドラゴンと化したククは口の中に魔力を集中させた。

 それを一気に放つ。


『クワッ!!』


 轟音とともに魔力の波動が口の中から飛び出した。

 一直線でゴーレムの体へと向かう。


 その波動は一瞬にしてグレイテストゴーレムの全身を粉砕した。


ドバァアアアアアアアアアンッ!!


 え!?

 い、一撃ぃ?


 波動は大地は抉っていた。


「すげぇえ……」


 ククはこんなに強いドラゴンだったのか!


 またも女の声のアナウンスが聞こえる。


『レベルアップ! レベルが1から64まで上がりました』


 え?

 聞き間違いか!?


 しかし、ステータスを確認する暇はない。


「きゃああああああ!!」


 エルフのお姉さんが、もう1体のグレイテストゴーレムに襲われていたのだ。

 大きな手が彼女の体を掴もうとする。


 まずい!

 お姉さんを助けなくちゃ。

 でも距離があるぞ。

 ククに命令するにも時間がかかる。


 ああ、俺がもっと速く移動できたらなぁ……。


『スキル 加速アクセルを発動させます』


 え? スキルだと!?


ギュゥウウウウウウウウン!!


 速いッ!?


 俺の体は瞬時に移動して、お姉さんの体を抱きかかえていた。


 もしかして、レベルが上がったから、新しいスキルを取得したのか!?


 ゴーレムの手を躱して着地する。


ズザザザーーーー!!


「お姉さん。怪我はない?」


「あ、ありがとうございます」


 良かった。

 スキルの考察は後回しだ。

 よぉし、


「クク! 残りのグレイテストゴーレムに攻撃だ!」


『クゥーー!!』


 再びククの魔力が喉の奥に集中する。


『クワァアア!!』


 巨大な魔力の波動が発射。

 瞬時にしてグレイテストゴーレムを破壊した。眼前に広がるのは抉れた大地だけである。


「やったな、クク!!」


『クックーー!!』


「カ、カイゼルドラゴンを使役するなんて……。な、何者ですかあなたは?」


「あはは。別に大した者じゃないですよ」


 などと笑っていると、


『レベルアップ! レベルが64から82になりました」


 また上がった……。

 ゴーレムはS級モンスターだったから経験値が大量なのか。


 ギルドのみんなはこの情景に腰を抜かしていた。 

 顎が下がったまま閉じない者もいるようだ。


「「「 す、すげぇ…… 」」」

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