眩しい。なんなの、なんでこんなに眩しいの。私は細く瞼を開く。

「やあ、目が覚めたのかい、お嬢さん。」

私は声のした方を見る。そこにはいかにも悪魔?というものがいた。大きく全体的に真っ黒。顔は大きく目や口などのパーツも全て普通の人より大きいし、口角が少し上がり開いた口からは牙のようなものも見える。少し湾曲した角?も頭から二本ニョキと生えている。

「え?何?悪魔?私、車に轢かれて‥それで‥。」

死んじゃったんだ‥。事故の時の様子が頭の中でフラッシュバックする。あれ、でも今はどこも痛くない。そっか、死んだら痛みとかも感じなくなるのかな。

「そうさ。君は死んだ。だから今ここにいるんだよ。」

私は頷く。悪魔?は私の様子を見て満足したようだった。

「私の名前はフレユール。悪魔さ。君の肉体から離れた魂は僕が刈り取ったようなものだ。さあ、ここで問題です!君は今からどうなるでしょうーかっ?」

えっ?どうなるって‥。私は少し考えてから口を開く。

「天国とか、地獄とかに行くんじゃないんですか?」

フレユールは少し落胆したようにため息をついた。

「お嬢さん。本当にそんなものがあると思っているの?確かに君たちの世界では天国だの地獄だのよく分からないものが存在していて良い行いをした者は天国、悪い行いをした者は地獄に行くって言われているらしいけどさ。そんなもの人間が勝手に作り出した幻想なんだよ。実際にはそんなものありはしない。死んだらそれで終わり。肉体は土に埋められて朽ち果てるか、焼かれて灰になっておしまい。そして魂は私達悪魔に刈り取られる。魂の救済なんてないのさ。」

「はあ。」

私は圧倒されてそれしか言えなかった。天国とか別に期待していたわけじゃないけど、悪魔に魂を刈り取られるってのも嫌だなって思った。

「普通はね。」

「えっ。」

私はフレユールの顔を見る。どうやら笑っているようだった。目が細くなり口角がさらに上がっていたから。

「でも、私は違う。生きていた時の君を見たよ。なんか面白いことをしていたよね。何か変なものを書いてさ、変な言語を喋っていた。まるで魔法が使えるようにね。私はね、お嬢さんに興味があるんだよ。だからいつもと違うことをしようと考えたわけさ。」

私の頭の中はハテナでいっぱいだった。見られてたの?あの自分の妄想みたいな魔法を使っているところを?いつ?っていうかどうやって?どうやら私は顔に出ていたようでフレユールは少し笑っている。

「悪魔は生きている普通の人には見えないんだ。それに壁なんてないようなものだからね。好きなように出入りできるし、覗き見し放題!君が近々死ぬって分かった時に生きている時の様子を見に行ったんだ。まあ、私の魂を刈り取る前のルーティーンの一つだと思ってくれていい。」

まるで私の考えが見透かされているようだ。なんか恥ずかしい。

「でね、考えたんだよ。君が魔法の使える世界に行ったらどうなるんだろうってね!」

はあ!?

「今、はあ!?って思ったでしょ。それはそうだよね。魔法の使える世界なんておとぎ話の中でしか存在しない。君たちの世界ではそれが常識だ。君の反応は普通なんだろうね。でも、実際にはあるんだよ。そして私は君をその世界へ転生させることができる。」

うそ!?そんなことできるの?魂を刈り取られるよりそっちの方がずっといい。今までの辛い世界とは違うところへ行きたい。

「もちろん代償はあるよ。君は私の言うことを最優先に実行しなければならない。いくら君がしたくないことでもね。私の指示は君の頭に直接話しかけるから君も頭の中で考えるだけで私と会話可能だ。そして頭は君の肉体を動かすことも可能だから私が自由自在に君を動かすこともできるわけ。まあ、私が何もしなければ君は好きなように動けるしなんでもできるんだけどね。どう?する?」

「します!」

考える必要もない。どうせ悪魔に刈り取られる運命だったのだ。もし転生して違う人生を送れる可能性があるのならしないしない理由がない。

「ははっ。さすがだね。了解した。では、君は今から私の従者だ。その代わりに君を転生させる。これで構わないかい。」

「はい。それでお願いします。」

「交渉成立だ。では、今から君を転生させる。目を閉じてくれ。」

私はゆっくりと瞼を閉じる。

「そのままいてくれ。少し眠るけれど今度目が覚めた時にはもう君は違う人生を歩み始めているからね。」

では、素敵な転生を。フレユールの一言を最後に私の意識は薄れていった。

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