第79話【 最強のへっぽこハンター 】


 から部屋へ入ってくる………。


 「ん???」


 部屋のみんなは、お偉いさん含め頭にハテナマークがついている。

そんな光景にヤブロスとバウロスが、其々別々に頭を抱えていた。


お尻から部屋へと入ってきた男の子がルイス司祭の右手を大事そうに引いている。

左手には、腕を凝視する女の子。

そして、司祭の腰と背中を支える様に入って来る男の子………。


「何事だ??」


「ル、ルイス司祭。大丈夫ですか?」


心配したロードル伯爵がそう声を掛けると、執事のクレタスが素早く司祭の横に付き、椅子を引いて座るように促した。


「フウー。遅くなってすまなかったねえ」


「お、お身体、そんなに悪かったんですか?」


ロードル伯爵が驚くその近くで、クラウディー、バジール、テリアーノは目が点。

よく知る子供達が入ってきたからだ。

1人、ヤブロスは変顔で天井を仰いでいるが……。


この奇怪でみょ〜な空間……、自然とみんなの視線が誰だか知らない子供達へと集まっていく。


「な、何で…」


とクラウディーが言いかけた時、その言葉を遮るようにエルとアルガロスが一歩前へ出た。


「皆さん!! 司祭の付き添いで来ました、エルです!」


「アルガロスでっす!!」


そしてエルとアルガロスが、喋れないカルディアへ手を伸ばし、一緒に……。


「カルディアで〜っす!!!」


と軽〜く挨拶した。


エルは更に、クラウディー、バジール、テリアーノの方へ向き、目を見開いてガン見しながら改めて挨拶をする。


「はじめまして!! 宜しくねっ!!」


「………あ、あぁ……、宜しく……」


クラウディー達は、口をポカンと開けているが、一応頭は動いている。事情は分からないが、知らない者同士と言う事にしておいて欲しいらしい……。


みんなは呆気にとられ、無言で子供達を見ている。

そんな中、ギルド・ハンター管理局次長のルーカスが、子供達に声を掛けた。


「君達、今は下がってくれたまえ」


「あっ!」


バウロスはすかさずルイス司祭の事を伝えようとしたが…エルの口の方が……早かった。


「無理だね~! 今治療中だから!!」


「な、何だ? その態度は」


ルーカス次長の言葉は当たり前で、この場にいるのは司祭、貴族、局長と位の高い人達が集っている。

しかも、その内容が緊迫した事柄だから尚更だ。


しかしそんな事、エル達には関係無かった。


「みんな本当に司祭の事を心配してるの? んだよ?」


突然告げられた恐ろしく重篤な言葉に、激しく驚く大人達。


<<「呪われてる?????????」>>


屋敷の屋根が吹き飛ぶ様な大声が、みんなから吹き出した。


「うるさいっ!! 解呪の邪魔!!」


低い声がカルディアから漏れ出てくる。

その声にみんなは凍りついた。


『デジャブ……』


バウロスはまたまた、頭を抱え込みながら押し黙りうつむいた。


「怒られちゃったね! みんな!!」


といたずらっぽく笑うエルを見て、何故か笑顔の

デイキシスギルドマスターのシルヴァニア。

共通する所でもあるのか……。


彼女はクラスAで、落震斬撃魔法技師の実力者。

技師である為、魔法には詳しいのだが、呪いとは分からなかったのだ。


「呪いってほんとかい? 司祭はあたいも診たし、クラスAの回復魔法士や医者にも診てもらってたんだよ?」


「ほんとだよ! 何か皮膚に薄っすら模様があって、カルディアは回復魔法得意だから自分の魔力を司祭の腕に流したんだって…」


「魔力を司祭の腕に流す??」


「うん。そしたら呪いの刻印がクッキリと浮かび上がって来たんだって! カルディアはすごいだろ!!」


「ま、まじか!? そんな事が……。でも解呪ってなると、回復魔法士じゃなく、浄化や状態異常持ちの補助魔法士の方が適任じゃあ……」


「良く分かんないけどねぇ、呪いのが見えるんだって!」


<<「呪いの魔法式━━━━━━━!!!?」>>


またまた屋敷の屋根が吹き飛ぶ様な大声が響く。


「あーうっさい!! 解呪の邪魔って言ってるでしょ!! 黙ってて!!!」


また鋭い目付きで言い放つカルディアの声に、殺気を感じ一同凍りつく。


『デジャブのデジャブ……』


バウロスはまたまた、頭を抱え込みながら押し黙りうつむいた。


「ま〜た怒られちゃったね! みんな!!」


と、エルは何故か身体をくねらせ笑顔だ。


「魔法式が見えるって??……、き、君達はハイクラスなのかい?」


と定番の質問が、目を丸くしたデイキシスギルドマスターのシルヴァニアから飛んできた。


すくっと真顔で直立するエルとアルガロス。


それを見たクラウディーとヤブロス、バウロスは、口を真一文字にし、すかさず目線を伏せた。

例の…バカバカしい猿芝居を見たくないのだ。


エルがカルディアを指差しながら、

「カルディアがクラスEで」


アルガロスが手を上げながら、

「俺がFで」


エルも手を上げながら、

「Gで〜っす!!」


と白々しく元気よく答える。

回りのみんなは……期待がハズレて当然目が点だ。


「さ、最弱クラスじゃないか!!」


驚くのも無理はない。

司祭の付き添い、呪いの発見、それに解呪作業。

本来ならどれも、ハイクラスの者でしか対処出来ないはずだからだ。


しかし、何故かエルは胸を張っていた。


「俺達は最弱だけど、のへっぽこハンターなんだ!!」


みんなは意味が分からず目を丸くしている。



「さ、最強のへっぽこハンター!?……」



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