第78話【 集結 】


 <ガゴガゴガゴッ>


 ドラントスの街中を、今度は教会からロードル家へと走る1台の豪華な馬車。


中には、衛兵のバウロスを挟む様に、エルとアルガロスが。反対側にはルイス司祭とカルディアの5人が乗っている。


カルディアは、集中し一切喋らずルイス司祭の治療に望んでいる。


<ガタッゴトン>


「おぃ~……」


揺れる馬車が気になるアルガロスは、御者と隔てた小窓に顔を向ける。


「あまり揺らしちゃぁ駄目だよー!!」


「…お前等なぁ……」


「だって、治療中なんだから! ねー!!」


と、エルがアルガロスと顔を会わせて白々しく傾ける。


「………」


確かにルイス司祭の治療は優先されるべき事柄。

2年程前からずっと体調を崩しており、それを治療しているのだから。


それに相手は司祭で町長。ドラントスの街で1番身分が高いと言っても過言ではない。

バウロスもそれは分かっているので、付き添う子供達に強く言えないのだ。


「お前達はハンターだよな!?ハイクラスなのか?」


「いやぁ~、まだ駆け出しなんだ!」


エルは頭を掻きながら苦笑い。


「カルディアがクラスEでしょ!でアルガロスがF、俺がG」


「なにぃー、最弱じゃないか!」


タメ口ばかりな子供達だから、もしかしたら世間知らずなハイクラスかもと思っていたが、それが最弱とは……。


「最弱バンザ〜イ!!!」


とエルとアルガロスは両手を上にあげ、身体を揺らしながらそれを楽しんでいた。


「………」


バウロスは何とも言えず、頭を抱え込み呆れ顔だ……。

そのまま横を向くと、エルの超笑顔があった……。


「……、クラスAの回復魔法士にも何度か診てもらったと聞いたが、どうだ? 本当に治療出来そうなのか?」


クラスを聞いて、さらに子供達の能力の怪しさが気になっての発言だ。

すると、エルは腕組しながら少し押し黙る。


「んー……」


「少し時間は掛かるけど、出来ると思うよ!」


「ん?」


バウロスはと言う言葉が引っ掛かり、頭にあった手が無意識に下がる。


「何で解呪なんだ?? 病気の治療なんだろ?」


「違うよ。呪いの魔法が掛けられてたんだ!」


<<「え━━━━━?? 呪いの魔法???」>>


馬車の天井が抜ける程の大声で、ビックリするバウロス。

勿論、みんなはその大声に驚いている。


「うるさい!! 解呪の邪魔!!」


低い声がカルディアから漏れ出てくる。

それでもその目は小刻みに動き、魔法式を読み解こうとしていた。


「怒られちゃったね! バウロスさん!!」


と笑顔のエル。

バウロスはまた、頭を抱え込みながら押し黙りうつむいた。


貴族に仕える威厳ある衛兵……。

それが、ハンターとして最弱な訳もわからない子供達に責められるとは………。


「………」


豪華な馬車は、其々の思いを乗せてドラントスの街を駆けていくのであった………。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ロードル伯爵家の屋敷。

そこには既に、ルイス司祭、バウロス以外のみんなが集まっていた。


ロードル伯爵

ギルド・ハンター管理局の局長、テオコスタ

同管理局の次長、ルーカス

デイキシスギルドマスターのシルヴァニア

同ギルドセカンドマスターのエリック


訪問していたクラウディー、ヤブロス、バジール、テリアーノ。


そして、彼等に飲み物を出している執事のクレタスと使用人達。


<コトン>


コーヒーが銀のカップに注がれ、静かに置かれる音が部屋に響く。

一通り話を伝えたロードル伯爵は、一度コーヒーを口に含む。


「皆さんの知恵をお借りしたいんです」


その言葉にデイキシスギルドのマスター、シルヴァニアが立ち上がり、眉間にシワを寄せながら<ドンッ>とテーブルに手をついた。

そして、ニヤッと笑いながら口を歪ませる。


「今直ぐやるか!!」


シルヴァニアはこう見えても、女性である。


「シルヴァニア、事は複雑なんだ。急ぐと台無しになる」


ギルド・ハンター管理局のテオコスタ局長が、シルヴァニアに対して落ち着けと手で合図している。

しかし、シルヴァニアの興奮は止まらない。


「あたいの師匠、ジモン隊長と娘のベルナちゃんが攫われてんだ。それに他のハンター達も! 超緊急ですよ!!」


デイキシスギルドのマスターのシルヴァニア。

どうやらマスターと呼ばれる人達は皆、猪突猛進タイプのようである。


「分かってる。助けに行くのは今晩だ! それまでに……」


テオコスタ局長は、複雑な絡みを紐解く様に頭の中で整理し、段取りを考えていた。


そんな緊迫した情況の中……。


<ガチャッ>


みんなが集まる部屋のドアが開いた。


「失礼します、バウロスです。遅くなりましたがルイス司祭をお連れしました」


その声でみんなが立ち上がり、ルイス司祭の入待ちとなるが………、中々入って来られない。


しかも、部屋の外から何やら声が聞こえて来る。


「ゆっくりでいいから」


「ほらそこ、段差があるよ」


「腕は動かさないでねー」


と幼さが残る声が聞こえてくる……。

そうこうしていると、ドアからお尻が先に入って来た。


みんなは………、



「ん???」



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