第55話【 突然の知らせ 】


 <ゴトゴトゴト>


「は〜い、ごめんよ~!!」


バルコリンの街中を行き交う荷馬車。

活力のある御者の声と、民衆やハンター達の活気ある声が街中に響いている。


そんな中、エル、アルガロス、カルディアの3人は、今日こそはと ” クラス判定の再測定 “ をする為にハンター管理局へと歩いていた。


「この前は、大行列が出来てて諦めたからなぁ。今度こそ再測定してもうぞ!!」


クラスアップが分かっているのか、アルガロスがエルの肩に手を掛け、意気揚々と大手を振って歩いている。

そんな彼を見ながら苦笑いするエルは、ハンターとしての決まり事を再確認していた。


「魔物討伐の依頼を受ける事が出来るのは、クラスEからだからねぇ…。今の状態じゃぁカルディアしか当てはまんないし」


「活動範囲を広げたいから、クラスCは目指したいんだけどなぁ……」


魔物討伐の依頼が許されるハンタークラスは、クラスEからだ。ハンターの命、安全を守る基準なので従わない場合は、最悪ハンターカード没収となる場合もある。


現在の彼等のハンタークラスは、カルディアがクラスE。アルガロスはクラスF。そして、エルはクラスG……。

最弱クラスのオンパレードである。


「俺達、かなり強くなってるんじゃね!?」


とアルガロスがまた調子に乗ってガッツポーズを作っている。

そんなアルガロスは放おっておいて、カルディアがエルに向けて心配そうにつぶやいた。


「でもぉ……若くてクラスが上位のハンターって、経験不足につけ込まれて、騙されて乱暴に扱われるって聞くし……」


カルディアは心配性なので、色んな噂が頭をよぎっているのだ。


「ええ〜、そんな事になったら怖いよねぇ…」


とエルは肩をすぼめながら身震いし、眉を下げた。

それを見ていたカルディアは、心の中でひっそりつぶやく。


『エルに絡んだら、その人達はあの世行きだけどね……』




 横長で奥行きのあるギルド・ハンター管理局。

今日も沢山のハンター達でごった返している。

しかし、エル達が目指す再測定をしてもらう所は比較的空いている様だ。


「おおっ! 今日は大丈夫そうだぜ!」


とアルガロスが笑顔でカウンターに近付こうとした時、


<ドシンッ、ドシンッ、ドシンッ>


「おおー、あれが!! やっぱ風格あるな!!」


ハンター達のザワつく声が、ある足音と共に近付いてくる。

モヒカン刈りで筋肉隆々。背中には大戦斧だいせんぷを背負う大柄な男が、悠然とギルドカウンターの方へと歩いてくるのだ。


威圧感と風格に驚くハンター達の横を過ぎ、その男はカウンターに手を付いた。


「おはようございます、ブノーガギルドのマスター、バジールさん」


ギルドのカウンター職員がそう挨拶をしている。

彼は、バルコリンの街でカークスギルド同様に1、2を争うギルドのマスターである。


そう。この男は、エレティコス秘境でカークスギルドを発見し、また、エル達を保護した男だ。

その後ろには双頭杖そうとうじょうを持つ女性の姿もある。


「局長からある要件で呼ばれたんだが」


「ハイ、伺っております。こちらへ……」


と職員が奥の部屋へ案内しようとした時………。


<ドカドカドカッ>


そこへ突然、猪の様に駆け込んで来たハンターがいた。


カークスギルドのマスター、クラウディーだ。


<ドンッ>


ギルドカウンターに強く腕を振り降ろし、職員との話を遮った。


「ちょっと待った!! 何で俺達じゃ…」


と職員に対して言いかけた時、ブノーガギルドマスターのバジールがそれを遮る様にクラウディーの胸ぐらを掴んで自分の顔を近付ける。


そして、回りに聞こえない様に小声で……。


「クラウディー。これは極秘だと言ったろ!!」


「……し、しかしっ」


クラウディーの表情が苦難に歪む。引き下がれないを抱えている様に。


<ガチャッ>


<ゴウオオオー……>


カウンター奥の部屋から、凄まじい魔力をまとうクラスAのグレインカブース局長が出て来た。

この騒ぎに……怒っているのだ。


「きょ…局長……」


バジールとクラウディーの額から冷や汗が流れ出る。彼等もクラスAだが、同クラスでも魔力幅がかなり違う。


「君達…、入りなさい」


しずしずと連れて行かれるバジールとクラウディー。


そんな姿を見たエル達は、何か大変な事が起こってるのかもと思い、彼等の話をどうしても聞きたくなった。


「魔力を、様子を伺ってみないか?」


エルの提案に即うなずき、いたずらっぽく口を歪めるアルガロス。

それとは対照的に不安な表情を浮かべ、ちょっぴり罪悪感を抱くカルディア……。


再測定のカウンターに並ぶハンター達は皆、ザワつくギルドカウンターの方に注目しているので、エル達はカウンター横からこっそり中へ入って行った。


部屋には局長と次長のユリメーラ。

カークスギルドマスターのクラウディー。

そして、今回呼ばれたブノーガギルドマスターのバジールとギルドメンバーのテリアーノの5名がいた。



「既に君達には伝えているが……、」


と前置きしてから、グレインカブース局長が大きく深呼吸する。


「昨晩届いた情報で、まだ確認は取れてないが………、エインセルギルドが行方不明だと……」


緊迫、緊張が走る部屋の外で、同じく驚いてるエルがいた。



『え!?………リッサ姉ちゃんが!?』




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