第40話【 上位種の魔物 】


「ま、魔光石!!!?」


メンバーみんなが驚いている。

魔光石とは、魔力が結晶化して光を放つ物に変化した鉱物だ。


しかしそれだけでは無く、” 魔光石ある所にあり “ と言われているのだ。

秘宝石とは、魔力が結晶化してあらゆる宝石に変化した石の事。

魔光石が、秘宝石を探す一種のバロメーターになっている程なのだ。


「おぃおぃ、お宝ダンジョンなんじゃねーの!?」


ダンブールがニヤつきながらクラウディーの肩を<ポン>と叩いた。


その時!


<キキッ>


奥から何かの鳴き声が……。


素早く動くカークスギルドのメンバー。

一斉に各ポジションに付き、戦闘態勢へと入る。


「どしたの?」


と心配になったカルディアが、リースへ聞いた。


「魔物が出たようだわ。警戒してね」


とリースは手のひらをカルディアに見せ、その場に留まる様に伝えた。



 クラウディーの目に映ったのは、いつもの緑色の肌を持つ魔物が複数体……だが、何やら少し様子が違って見えた。


「ゴブリン!?なのか?」


武器を持つゴブリンとおぼしき身体の色が……黄色やオレンジも混ざっていて、醜い容姿をさらに醜くしていたのだ。


クラウディーの前でニヤッと不気味に笑う複数体のゴブリン。

そして、目の前で寄り添い……お互いの身体が醜くする。


<ズリュッ、グチュグチュ……>


耳障りな振動が静かな洞窟内に響くと同時に、あまりの気持ち悪さに耐えきれなくなり、ナイーサの小さな悲鳴が上がる……。


「ひやっ」


筋や肉、神経繊維や血管や骨。眼球に鼻や口………。それらが醜く、気持ち悪く融合していったのだ。


そして……肉体が交差し融合した魔物が、1体の大きなゴブリンに………。



「あっ、あれは……ゴブリンデフォームだ!!」


至る所で融合し合うゴブリンデフォームの群れ。

背丈は2メートル程になり、力は5、6倍に膨れ上がると言われている。


「警戒しながら倒すぞ!!」


クラウディーがそう声を掛けたと同時に、各メンバーが攻撃を開始した。



「ゴブリンデフォーム??」


アルガロスがそう補助魔法戦士のヘルンに声を掛ける。

ヘルンは攻撃態勢を維持しながらアルガロスの方を見て、心配かけまいと軽く笑顔で答えた。


「そうよ。ゴブリンデフォームって、ゴブリンと同じ種に属してるんだけど、その性質は異質でが得意なの。ゴブリンの中で1番の上位種よ」


「へ、変形!? 上位種……」


「力の差を感じた時は、今みたいに相手より優位に立つために合体、融合したりするわ。……それが奴らの力なの」


<ゴクリ……>


アルガロスの喉が鳴り、冷たい汗が頬を流れていく。

沢山訓練したが、初めて聞く魔物の種類を前に、緊張感が高まっているのだ。


「大丈夫よ! 君達が遭遇したオーガくらいの力じゃないかしら!!」


アルガロスの表情を見て、ヘルンが助け舟の様な情報を出してくれた。

それを聞いたアルガロスは………。


「かかって来やがれ! ゴブリンデフォーム!!」


とさっき迄の緊張が嘘の様に、声を張り上げ粋がっている。


「こらっ、戦っちゃぁダメでしょ!」


「そ、そうだった……」


保護下のと言う事が頭から飛んでいて、勢いに任せて発した叫び……。

ヘルンにちょっぴり注意されてヘコむアルガロスが、恐縮しながら可愛く両手を前で組んでいた。


『……分かりやすい子。……ちょっとマスターに似てるわね……』


はにかみ笑うヘルンは、リースと顔を見合わせくすりと微笑んでいた。



 ギルドマスターで火炎攻撃魔法剣士のクラウディーが、炎をまとう剣を振りかざす。


<ゴブオオォッ>


その業火が融合したゴブリンデフォームを包み、一瞬にして命を焼き尽くす。

クラスAの力は、絶大で高貴な力として崇拝される程だ。


エル達の近くにいるヘルンとリース以外の他のメンバーも、薄暗いダンジョンから湧いて出て来るゴブリンデフォームと戦い、善戦していた。


そんな彼等を見ていたエルだが、何故か胸騒ぎが収まらない。体調は良くなっているが、その反面早い鼓動が収まらないのだ。


『なんだ?この感覚……。胸騒ぎが収まらない……』


順調にゴブリンデフォームを倒し、確実に数が少なくなってきている。

みんな、これなら安全に安心して前へ進めると思っていた………。



その時━━━━━━



<ゴリゴリッ…ドスン………>


   <ゴリゴリジャリッ>


<ゴグリッジャリッ……>



ダンジョンの奥から異様な音が響く。

そして大きな何かが、少ない光を反射しながら岩に手を掛け……、


<ズオオッ>


と出て来た。


「なっ!?」


「なんだ?こいつは………」


カークスギルドのメンバーが驚き見上げる先には……。


巨大な身体、かつ怪力と分かる程の盛り上がった肩と太い腕や足……。

それより特徴的だったのは、砕かれたガラスの様な物が集まり、大きな塊となって醜悪な容姿を持った魔物が出て来たのだ。



「トロールカレット!!!」



敏捷術戦士のヤブロスが、驚いた表情でそう叫んだ。



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