第25話【 うごめく魔物 】
激しく渦巻く魔力のゲート。
しかもオレンジ色と言う事は、この地より強い魔物がいる地域に繋がっていると言う事……。
「オレンジゲートだ! 警戒しろ!」
リッサの言葉で、更に緊張感が増していく。
この地より強い魔物がいる地域に繋がっていると言う事は、エインセルギルドのハンター達では太刀打ち出来ない可能性があるからだ。
「……一旦下がるぞ!」
悔しいが、安全が確保出来そうにない現状では仕方がない。
ゲートが発生してから何日経つのか。
今は魔物の気配が無いが、ゴブリンが殺されてる事実から、出入りがあった事は分かる……。
調査を中断して一刻も早くギルド管理局に報告しなければ、この地域にいない強い魔物が徘徊し、居座る恐れがある。
警戒しながらゆっくり下がるメンバー達。
言葉少なく、ダンジョンの外へと歩みを進めていた。
「リッサ…こりゃぁ……やばいんじゃねーか!?」
デリスは客観的に状況を判断し、自分達の戦力も加味した上で、自身の考えをそう伝えた。
「えぇ、このまま調査を進めるのは得策じゃない。先ずは……ギルドに報告しなけりゃいけないけ……ど………」
<ゾクッ!!!>
外へ向けて後退するリッサの足がピタッと止まった。
後ろ……、岩で暗くなり見えない部分に、強い気配を感じたのだ。
「その猶予も…無いかも…な……」
そう言いながら、小さく手を上げるリッサ。
リッサは……、影になった部分に視線を向け睨んでいる。
ジリジリと下がるリッサの行動に、他のメンバーもその異変に気付いたのだ。
『何かいる!!!』
リッサはペトラオスに合図を送る。
腰に付けた信号拳銃をフランクに渡せと。
うなずくペトラオスは腰に付けていた信号拳銃を取り、補助魔法士でクラスDのフランクに投げ渡した。
「フランクとコリンジアは今直ぐダンジョンから出て、赤い発煙弾を2発打ち上げて! そして、その場で身を隠しながら待機ね! 危ないと思ったら迷わず逃げるのよ!」
リッサは口早にそう説明すると、フランクとコリンジアはうなずき、即、外へと走って行った。
ダンジョンの奥……影の部分を警戒し睨むメンバー。
そこから……動く何かが………。
<ゴリッ……>
漆黒の闇から…ゴツゴツとした魔物の足…。
筋肉で盛り上がったくすんだ水色の胴体……。
そして……牙と角を持つ醜い顔が……、のそりと出て来た。
「オ…オーガ!!」
強靭な身体と強い力を持つオーガが暗闇の中から………複数体現れたのだ……。
リッサ達に戦慄が走る。
オークより強いと位置付けされるオーガ。
怯むエインセルギルドのハンター達。
リッサ以外……彼等は今まで一度もオーガと戦った事が無い。
醜い口が、糸を引きながら大きく開いた。
<グオオオオー>
オーガの雄叫びが、ダンジョンの中に響き渡る。
のどかな顔で座りながら月夜を見上げていたエルだが、表情が突然険しく変わる。
魔力の濃度や動きに敏感なエルとモサミスケールは、それを感じた方角を見据えていた。
⇄「!…魔物の威嚇!?……」⇄
⇄【 さっきのハンター達じゃな 】⇄
⇄「魔力が突然上がった……。もしかしたら…ゲートが発生してるのかも」⇄
心配に思ったエルは、立ち上がりながらアルガロスに声を掛ける。
「アルガロス、ゲートが発生したかもしれない。行くよ!!」
「はっ? はあ?? ゲート? おぃおぃ待ってくれよー!!」
訳分からず焦るアルガロスだが、考える余地なく荷物をまとめ、エルを追いかけるしかなかった。
<ガキーン>
鋼の様な肉体に弾かれるペトラオスの短剣。
その反動でバランスを崩し、仰け反りながら倒れそうになる。
身体には既に無数の傷が……。
「グワッ、やっぱ駄目か……」
そこへ大きく振りかぶった腕を振り下ろしてくるオーガ。
<ガゴオーン>
ペトラオスは素早く身をひるがえし、回避しながら立ち上がり叫んだ。
「ジョージ!」
そのオーガに対して攻撃魔法を唱えるクラスDのジョージ。
「
激しい炎がオーガを包む。
瞬時にペトラオスが跳び掛かり、短剣をオーガの目に突き刺した。
「グギャオー」
悲鳴を上げるオーガが、苦し紛れに腕を振り回す。
ペトラオスは、歯を食いしばりながらかろうじてその腕を回避するが、傷を負い疲労が蓄積された表情をしている。
それに気付いた回復魔法士のコラースが、ペトラオスに近付き回復魔法をかけていた。
盾でオーガの腕をガードしながら斧を振り回すデリスも、善戦しているが疲労が溜まり、苦しい表情に変わっていく……。
クラスDで回復魔法士のファイナがデリスに近寄り回復させているが、傷や体力の回復が間に合わなくなってきている。
その先でリッサはオーガに剣を振りながら、皆が疲弊してきている現状を把握していた。
『まずいな……。オーガが多過ぎて押されてる……。このままじゃあ………』
ダンジョンを駆け出てきたフランクとコリンジア。
フランクは、素早く信号拳銃を空へ向けて、パラシュート付の赤い発煙弾を2発打ち上げた。
<バシュン、バシュンッ>
夜空に赤く輝く発煙弾。2つの明かりがパラシュートにより、ゆっくりと落ちていく。
「こんなので……街まで届くのか?」
発煙弾を見上げながら、フランクは心配に思うが術が無い。
とにかく願い、待つしか無いのだ。
『みんな……無事でいてくれ………』
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