第24話【 ダンジョンの中のオレンジゲート 】
静まり虫の鳴き声が聞こえる暗い森の中で、必死に剣を振るう少年の姿がある。
<ガツンッ、ザクザクザクッ>
<ポトポトッ>
枝を斬り落とし、宙を舞う枝をさらに斬り刻んでいく。足元に落ちる枝の破片。それを拾い上げたのは……、
アルガロスだった。
「フウ…、どうだ!」
額の汗を拭いながら、ドヤ顔で枝の破片を見せて来るアルガロス。
「ん?」
と振り向くエルの頬は、目一杯膨らんでいた。どうやら食べ物を口に含んでいる様だ。
「おい!! 飯食ってる場合か? 枝を粉々に出来たんだぜ!!」
自慢げにそう言ったアルガロスだったが、エルの反応は……極薄だった。
「出来て当たり前だよ、アルガロスだもん」
褒めているのかいないのか、何とも冷たい返事だ。エルはアルガロスのスキルを知っているので、その様な反応になっているのだが、当のアルガロスは、それを知らないから仕方ない。
「モサミも今の見ただろ! どうだった?」
【 斬り口が雑じゃな…… 】
褒めてもらおうと思ったが、半開きの目で関心無さそうに答えるモサミスケール。
今まで必死に頑張ってきたアルガロスは、二人の超薄〜い反応に苛立ちを隠せない様だ。
「……お…お前等……」
「褒めろよな! 褒めれば伸びるんだぜ俺は!!」
等とズレた事を口ばしるアルガロス。
エルとモサミスケールは顔を見合わせ、ヤレヤレと言う表情をしていた。
そんな時、モサミスケールの表情が小さく一変する。
⇄【 ! 罪深き人間か? 】⇄
⇄「近いね。この魔力はハンターだ。複数人いるみたいだから討伐だろ」⇄
魔力に敏感なエルとモサミスケールのこの反応は、
漂う大陸で生きて行く為に培った、必要不可欠な力だ。
⇄【 ん? それは? 】⇄
エルが何やら手を動かしているので、頭の上のモサミスケールも揺れるのだ。良く見ると、草を揉みしだいているみたいだった。
⇄「即席の薬草団子だよ。それも魔力草を含めた強力なお団子! ドラから教えてもらったんだ!」⇄
エルは、そう言いながら綺麗な月を見上げた。
◇◇◇◇◇◇◇
魔力の渦を通り、ダンジョンの中へと入っていったエインセルギルドのハンター達8名。
各々が自分の役割を理解しており、それぞれの立ち位置でダンジョンの中を歩いている。
先頭は二人。
タンクのデリスとアタッカーのペトラオス。その後ろに剣士のリッサ。その後ろにクラスDのハンター達がいて、最後尾は回復魔法士のコラース。
ダンジョンに入って数分が経つが、魔物の気配が無い。
クラスDの男フランクが、ハンター達の真ん中で人間だけが認識出来る蛍光魔法を使い、辺りを照らしているが、何も出てこないのだ。
リッサは顎の下に手をやり、軽く首をひねっている。
「……おかしい…。何で魔物がいないのよ……。それに何? このかすかな変な匂い……」
「魔物の体臭か何かか? 夜は魔物の活動時間だから、出払っているんじゃないか?」
魔物の活動時間は基本、陽が落ちてからだが、それはあくまで活発に動く時間であって、夜しか動かないと言う事では無い。
デリスは分かっているが、このダンジョンに魔物がいないのでそのように思い、口に出したのだ。
「んー……、コリンジア。今どの辺りまで進んで来たの?」
リッサのその言葉に、地図を見ていたクラスDの女のハンターコリンジアも、悩ましい表情をしていた。
「歩いてきた時間を考えると…、既にダンジョンの半ばは過ぎていると思います……。2年前の前回は、この辺りから魔物が増えてきたはずなんですが…」
コリンジアも、他のメンバーも回りを見回しているが、やはり何も変化は無い。
そんな時、少し前に進んでいたペトラオスの視界に何かが映る。
『ん? あれは!?』
「おい、あれ見てくれ!」
驚き、指差す先には……生々しい魔物の血の跡……。
そして、その先にはゴブリンらしき部位が点在していた。
「散開!!!」
デリスは声を張り上げた。
戦闘態勢を取れと言う合図だ。それぞれが一定の距離をとり、身構える。
「………」
<ォォォォォー………>
ダンジョンの奥から、小さく響くかすかな音。
リッサはゆっくり用心深く、デリスとペトラオスの間を通り、前へ進んで行く。
「みんなはそのままで」
軽く腕を横に出してそう声を掛け、リッサだけ前へと進んで行くと……。
「! うっ……!?」
リッサの驚く目…。
そして自身の腕を鼻と口に充てた。
『ゴブリンがこんなにも……』
ゴブリンの……死体が数多く散乱していて、生臭い異臭が漂っていたのだ。
異様な光景に戸惑いながら、注意深く死体の間を進んでいく。
『……どう言う状況なんだ?………』
『何かが……ゴブリンを襲ったのか?………』
その先の曲がり角辺りが、薄っすらと輝いている様に見えた。そして、先程より奥から聞こえる振動も少し大きくなっている。
洞窟内は暗く見えない部分が多い。
これ以上リッサ自身だけで先へ進むのは危険と考えて、後ろの2人に合図を送った。
メンバーがそれぞれ回りを警戒しながらリッサの所へと進んで行く。
リッサは警戒しながらゆっくり進み、曲がり角を過ぎると……、顔が下からの光に照らされた。
<ゴオオオオー>
目に飛び込んできたのは………。
「オ、オレンジゲート!?」
激しく渦巻く……輝く渦。
ダンジョンの中に……オレンジゲートが出来ていたのだ。
この地域より………、魔力が強い地域へと繋がるゲートが……。
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