第20話 【 VOICE 】


モサミスケールは、アルガロスのボイスに目をつけた。


⇄【 エル、こやつのボイスを見てみろ 】⇄


⇄「え? どしたの?」⇄


とエルはモサミスケールに勧められ、アルガロスの ” ボイス “ を見る事にした。


<ブワンッ>


〜〜〜〜〜 VOICE 〜〜〜〜〜

●アルガロス

●魔力クラス:F

●総合値:73

●魔力濃度:68

●オーラ濃度:55

●オーラ循環速度:5

●生命力:133

●スキル

 ・基礎身体強化

 ・祝福された力

 ・祝福された感覚能力

 ・祝福された秘めた力

 ・祝福された空間認識

 ・祝福された隠秘な偉力

●魔法スキル

 ・基礎回復魔法

 ・基礎強化魔法

 ・特殊複合空間魔法

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


アルガロスの前にボイスが現れた。これは、相手のステータスが分かるの能力だ。


当のアルガロスは水を飲んだ後、気が晴れたのか、とにかく食べるぞとガツガツと口の中に肉を入れていた。


⇄「うわっ!! 魔力濃度が高いのに、総合値73のクラスFって…何で?……」⇄


⇄【 オーラ循環速度、気の流れが “ 5 ” 。全く循環しておらんみたいじゃな。理想なのは魔力濃度とオーラ循環速度の数値が近い方が力を出しやすいんじゃが、これでは魔力にブレーキを掛けているのと同じじゃ 】⇄


その言葉を聞いて、エルはキョトンとしている。

モサミスケールはエルに会う迄、霊界から出た事が無かったはずと。


⇄「あれ? モサミは霊体なのに、魔力の事詳しいのか?」⇄


⇄【 エルがドラの元で訓練しとる時や寝てる間、ワシは暇じゃから、魔力や魔術等、罪深き人間が得る力の勉強をしていたんじゃよ 】⇄


⇄「へぇ〜、やるじゃん!」⇄


⇄【 あったり前じゃ!! 】⇄


モサミスケールは自慢気にそう言ってるが、本当はドラから覚える様にと鬼の形相で言われたのだ。


⇄「これ見てよ! ” 祝福された力 “ とか ” 基礎強化魔法 “ とか……これって、メチャ戦闘向きだよね!? 」⇄


⇄【 ああ。それにこの “ 特殊複合空間魔法 ” スキル……使う事が出来れば超激レアじゃぞ! 】⇄


モサミスケールはエルの頭の上で、身を乗り出しながらモゴモゴ動いている。そんな彼等をよそに、アルガロスはガツガツと口に肉を運ぶ事に精一杯で、回りが何も見えていなかった。


⇄「ホントだ! でも、アルガロスは皆の足を引っ張ってるって言ってたけど…何でだろ?」⇄


⇄【 やはり、このオーラ循環速度の気の流れの低さが全てをダメにしとるんじゃろな 】⇄


⇄「じゃぁ訓練次第では、強くなるって事?」⇄


⇄【 ああ! 素質有りじゃ 】⇄


モサミスケールのその言葉に、エルは自分の事の様に目を輝かせた。

今日たまたま呼び止めた人が、時間を使って道案内してくれた。その人が強くなれないと悩んでいて、ハンターを辞めようとまで考えてた。


そんな人を少しでも強くする事が出来れば、間接的にだがサカトスやラミラの様な人を出さなくて済むかもしれないと。


誰かの為になるなら…自分の “ 器の強化 “ にも繋がるかもしれないと考えていた。


「はい! おまちどーさま。大盛りにしといたから!」


店の人がエルの食事をテーブル置き、ニッコリ笑っている。アルガロスはこの店の常連客で、その知り合いはハンターだろうと考え、大盛りにしてくれたのだ。


「えっ? いいの!? ありがと!!」


「うおっ!? 俺のより大盛りじゃんか」


アルガロスはエルに出された大盛りを見て、ちょっぴり不満気味。


「美味しそ〜!! いただきます!!」


そんな事お構いなしに、エルはナイフ、フォークを手に持ち、久しぶりの料理を口一杯に頬張っていた。

アルガロスは…なぜだかエルに負けじと、さらに口へと食事を運ぶ。それを見たエルも、負けじと口へ。

さながら、大食いバトルが始まったようだ。


モサミスケールはガツガツ食べる二人を見ながら、同じ罪深き人間同士が仲良くしている姿を見て、微笑んでいた。


「なあアルガロス」


「飯中に話しかけんな!」


アルガロスは食事に集中したい様で、話しかけられるのを嫌がっているが、エルはお構いなしだ。


「数日間くらい宿屋に泊まれる金額の依頼ってあるかなぁ?」


「んあ? 銀貨貰ったんじゃないのか?」


「それしか無いから、あまり使いたくないんだよね…」


「エルはクラスGだろ! 無理だよってか、飯中に話しかけんなって」


話しかけるなと何度言われても、こういう時は無知な無鉄砲さが勝るものなのだ。


「ええー? 何でクラスGだったら無理なんだよ」


と肉を頬張りながら真顔のキラキラ目で訴えるエルを見ると、さすがのアルガロスも答えずにはいられない様だ。


「そりゃオメー…、俺等みたいな低クラスには金額の良い難易度の高い依頼はあぶねーからな。だから受けられないんだよ」


「常設してる低クラスの依頼しか無理だな。当然依頼料も低いぜ」


「常設してる依頼って?」


「んー…主に草むしりだな。薬草とかなら依頼受けなくても持っていきゃー小銭に替えてくれるぜ」


少し難しい顔をしているエル。薬草探しは結構大変なのだ。故郷のナノーグ村で、村長から頼まれて薬草探しをした経験があるが、背の低い草なので回りの雑草から見えにくく、見つけづらいのだ。


「それで宿屋に泊まれる?」


「無理無理! 馬車一杯持っていかねーと!」


「えー!!?」


見つけにくい薬草を馬車一杯って、効率が悪すぎるし、現実的じゃない…。そんなエルの頭に浮かんだのはやはり…。


「じゃぁ……やっぱ魔物討伐?」


「魔物討伐は、クラスEからだ。これも低クラスを守る為だから仕方ないんだよ」


「えー…そんなぁ…」


理解は出来るが、街まで来たのにまた野宿をする事になる。野宿が嫌いな訳では無いが、たまにはふかふかベッドで寝たいのだ。


「低クラスでも魔物討伐出来るのって無いのかなぁ?」


「ギルド以外で、個人でグループを作ってるハンター達からの討伐同行依頼ならあるけど……酷い扱いされるぜ……」


「そうなんだ……」


エルは食事を頬張りながら色々思いを巡らせたが、手っ取り早く解決するにはこれしか無いと考えていた。



「じゃあクラスEになろうよ!」




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