第19話――凌辱
「いらねぇよ。そんなガキ」
リーダーの放った一言で、その場が一気に静まり返る。
全員が言葉を発せない中、
「ただのセフレに、なんで命張らなきゃいけねぇんだ。
刃をつきつけられている少女の表情はさらに青ざめて、今にも崩れそうだ。
投げかけられた言葉の
「俺を簡単に思い通りに動かそうなんて
その言葉に鋭く反応したのか。
険しい表情とともに、老夫婦は手に持ったマイクを投げ捨てて、揃って銃を構え直した。
「撃てよ。どうせ、俺にはもう何も残ってない。ただ、お前らみたいなクソ老いぼれに捕まって
先ほどまで
広場にいる全員は息を呑みながら、その光景を見つめているだけだ。
すると、老妻の方が銃を下ろし、
「失せろ」
「……え?」
死ぬ直前に
すると、
「お前にはガッカリだ。殺す価値もない」
隣にいた
「だから、母さん。こいつは絶対に変われねぇって言っただろ」
「まぁ、そうなんだけど。大穴を狙って、もしかしたらって思ってね。まぁ、たかが一億一千万程度の金だから痛くも
老夫は
「本当に死ぬ
老妻が続く。
「殺せ。だって? 何で上からなんだよ? ここで殺したら、また死体が増えて、後片付けが大変なんだよ。誰が清掃するんだ? ああ? そこまで考える脳みそはあるのか? きったねぇ死体をよぉ? そんな価値もねぇんだよ。お前は」
煙草の煙をゆっくりと吐くと、夫の方も道を空ける様に脇へよけた。
「早く出て行け。全員の士気を下げるだけだ。お前みたいなチン〇スは、このゲームに必要ない」
命を助けると言われているのだ。
本来は
正直なところ「殺せ」と覚悟を決めて言い放った時、
武士の
その決死の覚悟を、あたかも目前のうっとおしいショウジョウバエを払うがごとく、あっさりと否定されてしまったのだ。
これ以上の
クズを集めたゲームの中でさえも、一切必要ないと宣告される。
美しい最期の見せ所をにべもなく肩透かしを食らわされ、この上ないほど雑魚のテンプレートに仕立て上げられてしまった。
部下達が揃う全員の目の前で。
「とっとと、出て行け。カスが」
金属音を立てながら、それは小刻みな震動と共に地面に静止した。
それを見た瞬間、まるで亡霊のごとく浮遊した気持ちのまま前へ一歩踏み出している自分に気づき、
それでも、さらに一歩踏み込む衝動を抑え切れず、まるで背後の部下達を含む全員にその姿を見られまいと隠すように手早く鍵を拾い上げた。
ふと右脇を見ると、メイドに刃をつきつけられたままの少女と目が合った。
彼女の顔は恐怖と悲しみと、そして怒りに震えている様にも見えた。
しかし、今の健吾にとってそんな事はどうでもよかった。
一セックス奴隷の
悪びれる様子もなく面倒臭そうに視線を逸らして彼が前を通り過ぎると、また少女の目は見開き、その口から
「可哀そうに。こいつには
脇から投げかけられたメイドの
大理石の床を真っ赤に染めて
「あーあ。一人減っちまった。代わりに、この子にゲームに加わってもらうしかないねぇ」
背後から聞こえた声で
その光景を見ても、もう
「殿下」と呼ばれるほど威厳を築いてきたこの自分が
開錠されたドアノブを掴み内側に引くと、軋み音と共に両開きの片側が開き、向こう側に漆黒の
その瞬間だった。
「ちょっと待ってよ!
広場にいた全員が声の方に顔を向けると、金髪ショートの女が
同時だった。
さっきまで大広間とエントランスを区切っていたその境界線が、シューという音を立てて落下してきた。
全員が言葉を発する
遠目から見ていた者達も確信した。
その透明の板が、食い気味に上半身を前に乗り出した女の頭部へまともに直撃したのを。
ドスンという音と床の振動とともに、その場にいた全員が思わず目を背けた。
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