13 お仕事三昧
プルクラッタッターは、その小さな雑貨屋で、住み込みで働くことになった。
雑貨屋ごときの給料など……と思ってしまいがちだけれど、その雑貨屋は一般的な雑貨屋とは少し様子が違っていた。
牢屋のドアかな?って思ってしまいそうな、普通の店舗より頑丈な木の扉を潜れば、そこには所狭しといろいろな道具が並ぶ。
もちろん、一般的な雑貨も並んでいる。食器に、小物、服、アクセサリー。
壁には掛け時計が並び、それぞれ時を刻んでいる。
けど、何より目を引くのが魔道具や薬草の類だ。
この店では、パピラターも使うようなレアアイテムも多く揃っているらしく、魔法を扱う人々へのお届け物も多い。
レアアイテムなだけに、商品のお値段もお高い。
その分、店員の給料もお高いという寸法だ。
「上の部屋を使って。荷物は……ないね。部屋からエプロンを持っておいで。さっそく店の説明をするから」
「はい!」
ひとまず、気合の入った新入社員のような返事をしておく。
2階、手前の扉を開けると、窓からの陽の光に一瞬戸惑う。
気付かなかったけれど、店はそれだけ薄暗かったようだ。
レアアイテムも日焼けして使えなくなったりするんだろうか。
それとも雰囲気作り?
あのおばさんも、どことなく、占い師のような雰囲気がある。
窓に近づいてみる。
パピラターは、もう行ってしまったのかな……。
建物の隙間から通りは見えたけれど、パピラターが見えるはずはない。
生成りのエプロンを付けると、元いた世界と変わらない、雑貨屋の店員らしい姿になる。
姿見を覗いてみる。
「うっわ」
……思ったより、汚い姿がプルクラッタッターの目に映った。
後ろでロケンローも苦笑した(たぶん苦笑してる)顔を見せる。
1万4千円のミモレ丈スカートに、土が着いている。
というか、全体的に薄汚れている。
……大丈夫かな、こんな格好で。
仕方なく、店へ降りて行く。
店の説明をしながら、途中で、店主がじ……っとプルクラッタッターを見た。
「……着替えましょうか」
……やっぱりそうなりますよね。
「はい」
と、店主が出してきたのは、服一式だった。
「え?でも、私お金も持ってなくて……」
言いにくそうにすると、
「まあ、投資みたいなものね」
と、プルクラッタッターの顔を見た。
「……ありがとうございます!」
丁寧に頭を下げると、その服に着替えてみた。
白いブラウスに、革のベスト、革のスカート。
タイツに、靴まで用意してくれた。
柔らかな革靴で、とても歩きやすい。
「こういう靴って、魔法が付いてたりするんですか?」
気になっていた事を聞いてみた。
「うちの商品だから、少しだけね」
と、店主が微笑む。
やあ〜〜〜〜〜っぱり!
その通り。
魔法で歩きやすくされている靴は存在するのだ。
その日は、商品の説明を受けたり、お金の説明を受けたりで1日が終わってしまった。
お金は、プルクラッタッターの想像通り、金貨や銀貨が使われていた。
けど、一番多いのはカード決済だ。
お金は、商会に預ける事が多いらしい。
その商会のカードには、預けている金額が書いてあり、商会ごとに存在するカード読み取り用の魔道具にカードを読み取らせると、決済できるという仕組み。
そうだよね〜〜〜〜。
金貨持ち歩くのは重いもんね〜〜〜〜〜〜。
ふと、ロケンローの方を見ると、棚に置いてある鏡に、自分の姿を映して悦に浸っていた。
顔に見惚れたり、踊ってみたり、翼を動かしてみたり。
若干ナルシストな子ドラゴンである。
◇◇◇◇◇
カード読み取り用の魔道具は、実際にはその読み取り機に金額が記録されており、商会に持っていく事で現金にすることができます。
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