11 さよならの時がやってくる(1)
「お金も持ってないんでしょ?なんなら、仕事先紹介してもいいけど」
パピラターがそう付け加えると、プルクラッタッターの顔が明るくなった。
「ほんと?ありがとう」
ここから、一人でなんとかしないといけないのに、流石に先立つものがないのは不安でしかない。
「実は、人を探そうかと思ってて」
もし、この世界にアイツと一緒に落ちてきたなら、アイツは何か知ってるかもしれない。
世界を知るためにも、まずそこから始めるのがいいかもしれない。
そう、プルクラッタッターは思っていた。
「……知り合い?」
パピラターが、カップスープを啜りながら、プルクラッタッターの方を見た。
「ケイタロウだね」
訳知り顔でロケンローが相槌を打つ。
「えっ」
「えっ!?」
ついさっき知り合ったばかりのドラゴンから、ケイタロウの名前が出てきたことに驚いたプルクラッタッターと、そのプルクラッタッターの声に驚いたロケンローが驚いた顔を見合わせた。
「な、んであんた……ケイタロウの事知ってるの?」
「僕は、プルクラッタッターの記憶を少しだけ受け継いでるからね」
それが当たり前だというように、ロケンローが言った。
プルクラッタッターが少々嫌そうな顔をした。
この小さなドラゴンが私から生まれたなんていう話も、もしかしたら本当かもしれないという思いが、大きく膨らむ。
「そうだよ。ケイタロウ」
「そうだね。僕もケイタロウと話すのはいいと思うよ」
「……それって、男?」
プルクラッタッターとロケンローの会話をじっと聞いていたパピラターが、口を開いた。
ロケンローが、フライドチキンを齧る。
プルクラッタッターは、フライドチキンを齧るロケンローを見て、あれは共食いじゃないよね?とちょっとだけ余計な心配をした。
「そう、性別は男。年齢は33」
プルクラッタッターが説明を始める。
「ちょっと煩いっていうか、ウザいっていうか……」
「33……」
「私もね、会いたいわけじゃないんだけど。話したいことが、あるんだ」
「……ふぅん。知り合いなんていたのね」
「パピラターはどうするの?」
話を振られて、パピラターがプルクラッタッターの顔を見た。
そして、困ったように笑う。
「あたしには、使命があるんだ。魔王を、倒さないといけないの」
「魔王……」
プルクラッタッターが、驚きの顔を見せた。
「魔王なんているの!?」
プルクラッタッターは、声を上げてから、もし大声で言ってはいけないことだったらどうしようと思った。
魔物が居るなら、魔王なんてものが居てもおかしくないのかもしれない。
そんな存在を相手に、“倒す”なんて事をこんな大声で言って、命を狙われたりしないんだろうか。
配慮しなければ!という意識のもと、プルクラッタッターはこっそりと口元を隠し、小声で言い直した。
「魔王なんているの……?」
「ぷっ」
パピラターが吹き出す。
実際、確かに魔族はどこに紛れているかわからない。
ただ、すでにパピラターの存在は魔王に知られている。
それも、ついさっき大っぴらに魔法で魔物を倒してしまったばかりだ。
ここで大声を挙げたところで、大した違いはなかった。
それよりも、パピラターにとっては、こうして対等に会話ができる相手がいるという事実の方が重大事件だった。
「うん。あたしは……実は勇者みたいな存在なんだ」
◇◇◇◇◇
やっとちょっとずつお話が動いてきました。
仲良くなあれ〜。
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