10 初めての町

 それからしばらくして、意気揚々と2人と1匹は町に着いた。

 まあ、実際意気揚々としていたのは、歩くのが苦ではないパピラターと、長時間ふわふわと飛んでいられるロケンロー。

 プルクラッタッターは、一人、ぐったりとしていた。


 普段のプルクラッタッターなら、こんないかにもファンタジーな町へ辿り着けば、「最初の町だ!」なんてテンションも上がったかもしれない。

 けれど、これほど足も痛ければ、それどころではない。

 魔物がいつ出てくるんじゃないかと、ずっと緊張もしていた。

 やっと安心できる場所に辿り着いたのだ。


 座るところ座るところ……。


 頭の中はもうそればかりである。


「この店でいい?」

 とパピラターが尋ねた時も、プルクラッタッターは何も見ずに頷くしか出来なかった。


 ぼーんやりとしたまま、なんとかパピラターの後について行く。


 そこは、賑やかな町の定食屋だった。


 プルクラッタッターは、その店のウェイトレスによってテーブルに広げられたメニュー表を見て、目を見張った。


 日本語じゃ、ない……。


 メニュー表には、日本語は書かれていなかった。

 アルファベットでもない。

 プルクラッタッターが知っている文字では、ない。


 それなのに。


 まるで、知っている言葉のように。

 生まれてからずっと見てきた文字のように。

 その文字列を見て、プルクラッタッターには言葉の意味がわかってしまったのだ。


 知らない文字だってわかっているのに、意味がちゃんと付いてくる。

 じっと見ていると、まるで車酔いのように頭がぐらぐらした。


 それは、文字を読むことに慣れていないせいだった。

 まあ、慣れれば、プルクラッタッターは、いちいち頭をぐらぐらさせることもなくなるでしょう!


 やっぱり、私の身体に異変が起きている。


 プルクラッタッターは、自分の状況について、改めて実感した。


 あの時……、アイツと一緒にいて、気を失って。

 次に目を覚ました時は、もうこの世界の上だった。

 その時までは、確かに一緒に居たはずだったのに。

 アイツと何か、会話を交わしたはずなのに。

 気付くと何もない道の上に横たわっていた。


 ……やっぱり、アイツが何か知っているんだろうか。


 アイツも、この世界に居るんじゃないだろうか。

 探してみようか。

 アイツのことを。


「どうせお金も持ってないんでしょ。奢るから、あたしの食べたいものでいい?」


「あ、うん」


 そんなわけで、2人と1匹は食事にありついた。


 ウェイトレスに運ばれてきた食事は、プルクラッタッターでも違和感のない見た目のものばかりだった。

 あったかいカップスープ。

 サラダ。

 ローストポークのようなもの。

 フライドチキンのようなもの。

 パン。


 心なしか肉っぽいものが多いのは、パピラターが肉料理を好きだからだ。


 プルクラッタッターは、変な動物の肉だったらどうしよう、なんて思ったんだけど、お皿に載って出てきてしまっている以上、そこまで考えても仕方がない。

 プルクラッタッターは、諦めて肉を口に運んだ。

 ……想像通りの味だ。


 想像通りっていうのはつまり、ローストポークなら豚肉の味、フライドチキンなら鶏肉の味ってこと。


「あなたはこれからどうするの?」


 パピラターが、頭をこてん、と傾げた。



◇◇◇◇◇



仲良くなるのはちょっとずつ!

最終的にラブラブになります。

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