2 こうして二人は出会った(2)

「荷物は?」


 パピラターはぐるぐるとプルクラッタッターを眺めながら言った。

 どう見ても小さなカバン一つ持っていないのだけれど、一応聞いてみる。


 プルクラッタッターも周りを見渡している。

 どうやら、プルクラッタッター本人でさえも、荷物を持っていたかどうか、覚えがないようだ。


 プルクラッタッターは、自分の手の中までひとしきり見た後、

「ううん、何にも」

 と言った。


「…………」


 パピラターは不躾にも、プルクラッタッターをまじまじと眺めた。

 だって、余りにも不自然じゃないか。

 荷物を持っていたかどうかもわからないなんて。

 何処かの牢屋を抜け出して来た罪人でさえも、自分が何を持っていて何を持っていなかったかくらい、わかるものじゃないんだろうか。

 何処かで捨てられて、もしくは何かの事件か事故にでも巻き込まれて、記憶を失ってしまった人間なんじゃないかって、そう思った。


「何か、覚えていることはある?」


 そう聞くと、プルクラッタッターはものすごく困った顔をした。

 実際、プルクラッタッターは今までの人生を覚えていた。

 別に記憶喪失というわけじゃない。

 わからないのは、ここが何処で、どうやって来たのかという事だけだ。


「……誰かに連れてこられたような気はするんだけど、どうやってここに来たのかがわからない。ここが、何処なのかもわからない」


「そう」


 パピラターは「ふむ」と偉そうな顔をした。


「もしかしたら、何か魔法関係の事故に巻き込まれたか、何かの事故に巻き込まれたのかもしれないわね」


「魔法?」


 また、プルクラッタッターがキョトンとした顔をした。


 魔法だなんてまたまた、何の冗談なんだろう。

 それとも何かの例えとか、隠語とか、そういう類のものなのか。


 けど、何となく、プルクラッタッターは合点がいってしまった。

 目の前の、このどう見ても10代半ばから後半あたりにしか見えない少女は、怪しげな杖を持っているからだ。そして、怪しげなローブを着ている。

 これが旅の魔女であるとなったら、プルクラッタッターにも納得ができる説明だ。

 だって、やはり怪しいじゃないか。

 こんな、どう見ても人家もない場所に、乗り物もなく一人。

 どうやら歩いて来たようだし。

 プルクラッタッターの常識からすれば、10代の女の子はこんな場所を一人で歩いたりしない。

 プルクラッタッターが知る一般的な女の子は、こんなに長距離を歩く体力はないし、もしくは危ない人に襲われたりしないよう、こんな人気のない場所を一人で歩かないようにしているのだ。

 例えば夜の街中とか、裏路地とか、きっとこんな助けを求める事ができない人家のない道も。


 けど、それが魔法を使える旅の魔女というなら、話は別だ。

 例えば、自分の足を使わずに長距離移動する魔法が使えるとか。

 火の玉を発射して戦える、とか。


 ほら、目の前のパピラターは確かに、ファンタジックな杖を持っている。

 歴史がありそうな高価そうな、それでいて、パピラターが持つととても絵になる代物だ。



◇◇◇◇◇



そんなわけで、パピラターとプルクラッタッター。

二人のガール・ミーツ・ガールものです。

ちょっとコメディ寄りのもちろんハッピーエンドはお約束物語。

どうぞお楽しみください!

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