実は◯◯◯◯◯な魔女と実は◯◯◯の魔法少女が魔王を倒しに行く物語

みこ

1 こうして二人は出会った(1)

 ちゃちゃーーーーーーーん!!!


 ここは大草原のど真ん中。

 その大草原のど真ん中をずずいっと走る一本の街道の上での事だった。


 一人旅をしていた少女と、もう一人のここで倒れていた……少女(ひとまず少女にしておくね。)は、その場所で出会った。


 どうしてこんなところに?って疑問符をたんと頭の上に乗っけている一人旅の少女。

 この子は、なんと!

 実は◯◯◯◯◯なんだけど、これは誰にも内緒らしい。


 夜の色のフードを目深に被り、左手には大きなキラキラした石が付いた杖を持っている。まるでダイヤモンドみたいな石だ。

 もちろんその杖は足腰が悪いとか、旅人用だとかそういうわけではなくて、魔法を使う為の物。

 肩から斜めがけに、でっかいバッグを持っている。


 もう一人の……少女は、所謂キレイめカジュアルな服装に身を包み、街道にぺたりと座り込んだまま、こちらも疑問符を頭の上に大量に浮かべている。

 丁度、今、自分がどうしてこんな場所にいるのか戸惑っているところだ。

 この子は、なんと!

 実は◯◯◯なんだけど、今目の前にいるこの怪しげな少女に言ってもいいものかどうか悩んでいる。


 一人旅の少女は、キョロキョロと辺りを見回した。

 だって、こんな弱そうな少女が一人、こんな場所にいるのは不可解だから。

 荷物のようにドサッと馬車から落ちでもしないと、こんな街道のど真ん中で寝る羽目にはならないからだ。

 けど、連れの人間も、走り去る馬車も、この少女を襲った盗賊も、魔物も、何にも見当たらない。


 その倒れていた本人は、ここが何処か分からずに、キョロキョロと辺りを見回した。

 目の前の人間を頼ってもいいのかわからない。

 だって、ここにはこの人しかいないから。

 この格好が“まとも”な格好かどうかがわからない。


「どうして、こんな所にいるの?」


 最初に声を発したのは、一人旅の少女の方だった。


 倒れていた……少女は、戸惑いながらも一言、

「わからない」

 と言った。


 確かにわからなかった。ここが何処で、自分がどうやって来たのか。

 ううん。

 少しだけ覚えている。

 私は、空から落ちて来た。……アイツと一緒に。


「じゃあ、名前は?」


 倒れていた……少女は、さらに戸惑いつつ、指を顔に当てた。

 これは、この……少女の考える時のクセだった。


「……わからない」


 これは嘘だった。

 自分の名前は覚えている。

 名前は、◯◯◯◯◯という。ちなみに年齢は◯◯歳。かなり童顔。

 けど、その名を口にしていいのか分からなかったのだ。

 目の前の人間を、信じてもいいのかどうか、わからない。


 すると、一人旅の少女が、

「あたしは、パピラター」

 と、そう名乗った。


 倒れていた◯◯歳は、キョトンとしながらも、口の中でその名前を繰り返した。


 パピラターは首を一度、こてん、と傾げる。


「わからないなら、あたしが付けてあげる。じゃああなたは、……プルクラッタッター」


「え?」

 倒れていた◯◯歳は何の冗談かと思った。

 だって、それって人名!?って思ったからだ。

 けれど、この世界ではこの名前が普通なのかもしれないって、そう思って、笑う事も抗議する事も出来なかった。

 冗談かもしれないとか、試されてるのかもしれないとか、そんな風に思ったから、まじまじとパピラターの顔を見てみた。


 あ…………。


 フードに隠されている顔を見て、倒れていた◯◯歳は目を見張った。

 だって、あまりにもその少女の顔が綺麗だったから。

 パッツンの前髪。

 ふわふわした菫色の透き通った髪。

 アメジストのような深い色の瞳。

 なんて、綺麗。


 そして、あまりにも真面目な顔。


 本気なんだ。


「……わかった。プルクラッタッターね。よろしく、パピラター」

 そう言いながら、手を伸ばした。


 パピラターがその手を掴む。

 プルクラッタッターのすらっとした茶色の髪が揺れるのを見た。

 あたしのとは違う、ストレートの流れるような髪。

 好感の持てる可愛らしい顔立ち。


 そのままパピラターがプルクラッタッターを引き上げ、二人は向かい合って立つ。

 背は……同じくらいか。


 そしてパピラターは、ふうん、とちょっとだけ生意気なニコリ顔をした。



◇◇◇◇◇



さて、昨日、約1年かけた大作が最終回を迎えたばかりですが、本日からまた新連載です。

今回は、ゆるゆる百合ファンタジー!

できるだけほのぼのでぽわっといきたいと思います。

どうぞよろしくね!

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