新たな一歩を

いちのさつき

新人類Aと旧人類Bは新たな一歩を踏み出す

 ガンマ線バーストで荒廃と化した地球。その後に作られた管理マザーコンピューターの星系樹。その星系樹の子機のひとつの星樹人と呼ぶ新人類。外から飛来する噛蟲(イーター)と呼ばれるもの。それはアポカリプスとも呼べる世界だろう。或いは緑豊かな自然に戻った世界とも言えるのか。どちらにせよ。娯楽と呼べるものはない。新人類にはない概念だ。


「って感じだけどどう思う?」

「誰に対して言ってんだ」


 硝子のドームに新時代の頑丈なツルで出来た建物の中。緑色の肌を持つ星樹人Aが明るく、旧人類と言う古い時代の人間の生き残りの男Bに言っていた。突拍子のない発言だったので、慣れたように突っ込みを入れていた。


「まあなに。ある程度落ち着いてきたじゃん? イーターは別として」

「そうだな」


 ガンマ線バーストにより、荒廃と化したため、文明と呼ばれるものが滅んだ。その後に再生する手段として星系樹が誕生し、とんでもないスピードで浄化していった。同時に噛蟲が来るようになり、新人類と呼ばれる星樹人が生まれてその討伐や環境修復を担っていた。一応古い時代の生き残り……旧人類と呼ばれるものもいたが、あまりにも少ないため、戦力としてカウントしていない。それはさておき。


 ある程度の地球の修復が終わった。その次はどのようなステージになるのだろうか。星系樹はあくまでも地球の管理者でしかない。そして星樹人の役目は地球の維持のみ。自我を持つとはいえ、機械的な要素の方が強いだろう。しかしそれは個人差によりけり。Aという星樹人はだいぶ好奇心が強い人だった。Aの口角が上がる。


「そろそろさ。楽しいものも作るべきだと思うんだ。マザーが許す範囲で」

「星樹人か怪しい発言が出てきたよ!」


 再びBが突っ込んだ。


「マイフレンド。僕らだってね。人類だぜ? 欲しくなるんだよ。そういうの。てなわけでアイデアよろしく」


 Aからの頼みを聞いたBは頭をかきながらも笑う。


「しょーがねえな。知ってる範囲かつ、出来る範囲で教えるぜ?」


 少しずつ旧人類が楽しい知恵を与え、新人類が楽しみ、明日への希望を見出す。旧人類と新人類が共に歩む。その始まりの一歩がここで踏み出したのであった。

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