いや、何やってるの?
クランマスター室を出るとすぐに透明になったウィフレを方に乗せながら、階段を降り、エントランス室に来た。
するとさっきまでお酒を飲んでいたり、武器を磨いてたりして、ざわざわしてたハンター達が一瞬で静かになった。
「お、おい……ウィルが……化け物がクランマスター室から降りてきたぞ……また何か起きるのか!?」
「お、おれは急に用事が出来たから」
「わ、私も」
「お、おれは……腹が痛くなってきた!」
「頭が痛てぇ!」
各々が何かしらを口にして我先にと僕のクランから出ていった。
……僕一応クランマスターなんだけどな。もうちょっと慕ってくれても良くない? ……ちなみに化け物っていうのは悪口じゃなくて、一応僕の二つ名だったりする。……僕なんかよりよっぽど君たちの方が化け物なんだけどね。……だって僕は一般人より弱いんだから。
後しれっと逃げた中に唯一僕を慕ってくれてると思っていた後輩のセレネもいた気がするんだけど、気のせいかな。うん。気の所為だよね。あの子は僕を慕ってくれてるはず。……僕の方が100倍くらい弱いけど。
まぁいいや。取り敢えず二コーラさんの所に早く行こう。……あれ、このまま行ってもいいのかな。エントランス室に誰もいないんだけど、防衛面で大丈夫なのかな。……まぁ、大丈夫かな。うん。
もし仮に襲撃があって僕がクランマスターにふさわくしない! ってなればむしろ儲けものだし。
そう考えながら僕は自分のクランを出た。
「……早く向かおう」
僕はハンターに絡まれないように、前を向き堂々と歩く。
俯いてなんていたりしたらカモだと思われて直ぐに絡まれてしまうから。
僕は歩きながら、何気なくポケットに手を入れた。すると、何日か前のゴミが入っていた。……完全に忘れてた。
ゴミ箱、無いな。……うーん、流石にポイ捨てはどうかと思うし、クランに戻るか。まだ出てきてすぐだし。
まぁ、ハンター協会にゴミ箱くらいあるだろうから、そっちに行けばいいんだろうけど、少しでも遅く行きたかった。……早く済ませちゃった方がいいのはわかってるんだけどね。
自分のクランに戻った僕はゴミ箱に向かい、ゴミ箱の蓋を開いた。
すると……
「ま、マスター……ご、ごめんなさい。偽装までして逃げようとしてごめんなさい……」
そう言って震える茶色い髪のボブヘアーの女の子。セレネ・ボアッソンがいた。
……え、いやほんとに何やってるの。
混乱した僕は一旦ゴミ箱の蓋を閉めた。
いや、え? 待って……ほんとに理解できないんだけど。
僕は流石に気の所為かと思い、もう一度蓋を開いた。
そこにはやっぱり涙目で震えるセレネがいた。
「……セレネ、取り敢えず出ておいで」
「ッ、ま、待ってください。き、今日はどんな地獄へ行くんですか……」
地獄って……まぁ、確かに二コーラさんからの呼び出しは地獄か。
「メロンだよ」
「め、メロン?」
「うん」
怒ったら赤いメロンみたいになるからな。あの人。
「じゃあ、セレネも一緒に行こうか」
「ほ、ほんとにメロンを食べるだけですか?」
……メロン、食べたいのかな? だったらまぁ、帰りに買ってあげてもいい。それぐらいで僕の護衛に着いてきてくれるのならお易い御用だ。
護衛はウィフレがいるけど、多い方がいいもんね。
「そうだよ。だから早く出ておいで」
そう言って笑いかけるとセレネは安心したのか、さっきまでの震えがなくなり、ゴミ箱から出てきた。
僕はポケットに入っていたゴミをゴミ箱に捨て、セレネを連れてハンター協会に向かう。
何故かゴミ箱の中が異様に綺麗だったんだけど、どうやったんだろう。……そんな疑問を抱えながら。
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