第53眠 名前付き

 ぼくたちは依頼の達成報告をするためにダンジョンギルドに行くことにした。ついでに回収した素材なども鑑定してもらう予定だ。ギルドに着くと早速受付に依頼達成報告をした。


「はい。確かにゴーレムのコア3つですね。依頼達成です」


「ありがとうございます。ついでにこれも鑑定してもらいたいんですが」


ぼくはもう一つ魔物のコアを出した。これはリッチからドロップしたものだ。ぼくが動けなくなっている間に回復したカッシュが回収してくれたものだ。


「こ、これは」


なにやら受付嬢の様子がおかしい。焦っているようだ。


「確認しますが、あなたたちはEランク冒険者ですよね?」


「そうですが、どうしたんですか?」


「ちょっと確認してきます」


そういって奥の方に消えていってしまった。しばらく待っていると奥から背の高い美しい女性が出てきた。耳は長く先がとがっている。きっとエルフ種なのだろう。


「あなたたちがこのコアを持ってきたのですか?」


「そうです」


「なるほど。私はこのギルドの長エミリアです」


「なんでまたそんな偉い人が出てきたんだ?」


カッシュは疑問をそのままぶつけた。


「それは、これが原因です」


ぼくたちの持ってきたコアを指さす。


「これはその辺の魔物のコアとはかなり違ったものになります。よく見てください。ここに文字が刻まれているのが分かりますか?」


よく見るとコアには小さく、『アビス』と書かれていた。


「これがなんです?」


「つまりこのコアの持ち主であった魔物は『名前付き《ネームド》』であったということなんです」


「名前付き《ネームド》?」


「ええ。稀にですが、そのランク帯よりもはるかに強くなってしまう魔物がいるんです。それが『名前付き《ネームド》』です。それがダンジョン内に出た際には、例えばEランクの魔物が『名前付き《ネームド》』になったときはDランクやCランクの冒険者に討伐依頼を出し、討伐されるまではそこにEランク冒険者は立ち入れないようになってしまいます。それほどに強力なのです。しかし今回あなたたちはそれを倒してきた。だから、いろいろ確かめねばならず、私が出てきたというわけです」


「なるほど。たしかにかなり強かったですし、ぼくたちはボス部屋に誘い込まれました」


「かなりイレギュラーな存在なのでボス部屋以外でも活動できてしまうかもしれません。あなたたち以外から『名前付き《ネームド》』の報告を受けていないので、生まれてすぐの魔物だったのかもしれません」


「魔物は生まれてくるんですか?」


「ダンジョン内の魔物は倒されると魔素となり空中を漂います。そして時間がたつと新しい同じ種類の魔物へと形成されるのです。だから、ボスも何度も復活して次の冒険者を待ち構えることになります」


「そういう仕組みだったんですね」


ぼくが感心しているとエミリアさんが改まってこう言った。


「今回不運にも『名前付き《ネームド》』に当たってしまったわけですが、勇気をもって討伐してくれたこと、感謝します。今魔物たちの動きも活発になってきていて強い冒険者たちが必要なのです。あなたたちの活躍に期待していますよ」


「ありがとうございます」


こうして話し終えるとぼくたちは一度王都に戻ることにした。そろそろライトさんたちが帰ってくるからだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る