第54眠 魔王と勇者

 王都のパーティーハウスに戻ってきた。


「おう、お前ら久しぶりだな」


「ライトさん!いつ戻ってきたんですか?」


「昨日だな。案外早く片付いちまってよ」


「そうだったんですね。じゃあ、そんなに敵は強くなかったんですね」


「いや、それがそうでもねーんだ」


ライトさんは神妙な面持ちだ。


「魔物たちの勢力は確実に強まってきている。今回は一緒に戦ってくれたパーティーが強すぎたんだ」


「そんなに強い人たちがいるんですか」


「ああ、俺らもまだまだだと気付かされたよ。そもそも俺らはAランクで彼らはSランクのパーティーなんだけどな。あんなに差があるとは思わなかった」


「どんな人たちだったんですか?」


「バランスが取れていたパーティーだったんだが、1人だけ異質な強さを持った奴がいたな。まるでそいつのためのパーティーのようだった。竜の力をその身に宿して戦っていたんだ」


「竜の力!?」


「なんだ、知ってるのか?」


「多分、ぼくの知り合いだと思います。そうか、Sランクの中にいても異質な強さなのか」


ぼくは、久しぶりに聞くリュウジの活躍になぜか興奮していた。前なら名前も聞くのも嫌だったはずなのに。


「どうした?そんな目をキラキラさせて」


「いや、負けてられないなと思って」


「俺たちも目の当たりにして同じことを思ったよ。それでな、お前らには悪いんだが、しばらく俺らは前線に行くことにする。そこで自分たちを鍛えつつ、魔王軍と戦って行こうと思ってんだ」


「魔王軍。魔王って本当にいるんですね」


「ああ。なんでも一昔前、違う世界から召喚された者たち、のちに勇者と呼ばれる者たちが魔王を倒したそうなんだ。だけど倒される間際、魔王は最後の力を振り絞り、自分の一部を遠くへと飛ばしたんだそうだ。それから数十年後、異様な魔力を放つ大きな卵の殻が発見されたんだ。それを勇者たちに見てもらったところ、魔王の魔力に似ているということで、魔王復活の噂が一気に広まり、それと同時に魔物たちの勢力も徐々に増してきたんだ。まだ魔王の姿を見た者はいないんだがな」


だからぼくたちは呼ばれたんだなと思った。そういえば召喚士のおじいさんも言ってたような気がするような。あの時は気を落としてたし耳に入ってこなかったかも。


「なるほど、じゃあぼくたちもパーティーを正式に組んで皆さんに追いつかなきゃですね」


「おお!ついにお前らで組むことにしたのか」


「はい!そういうことなんで、ぼくたちは気にせずライトさんたちはライトさんたちで上を目指してください」


「ははっ、生意気言うようになったな」


ライトさんはクシャクシャッとぼくの頭を撫でてくれた。


「よし!お互い頑張ろうぜ」


「はい!」




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