第39眠 少年
傷だらけの少年が茂みから出てきたのだ。
「うっ」
そのまま倒れ込む。
「大丈夫かい?」
ぼく達は少年に駆け寄る。僕たちと同じくらいの年に見える。
「ったぁ〜」
少年が何か言っている。
「なんて言ったの?」
「腹減ったぁ〜」
「あーお腹がすいてたんだね。ちょっと待ってて」
僕はカバンの中からマジックポーチを取り出す。そしてそのマジックポーチの中からパンとメイさんに教えて貰って作ったモーモーのベーコンを取りだした。ソフィアに言って少しベーコンを焼いてもらう。そしてそのベーコンをパンに挟んで、少し野菜を挟むとサンドウィッチの出来上がりだ。
「ほら、これ食べなよ」
僕が少年の口の前にサンドウィッチを持っていくと、クンクンと鼻が動き、目がカッと開いたかと思うとぼくの手からサンドウィッチを奪い取り、夢中で食べ始めた。しばらく食べていると勢いよく食べすぎたのか、喉に詰まらせてしまった。
「み、みず....」
慌ててカバンの中を探すが見つからない。少年はどんどんと胸をたたいている。するとソフィアが、
「ごめんね」
といって杖を振る。
「アクアボール!」
小さな水の玉が少年の顔に向かって飛んでいく。咄嗟に少年はサンドウィッチを頭上に上げ、口を大きく開ける。見事に水の玉は口の中に入った。
ごくん!
「ふぃー危なかった」
そしてまた食べ始める。少しすると、食べ終わったようだ。
「いやー、助かった。ここ何日か何も食べてなかったんだよ」
「そうだったんだ。助けになれて良かったよ」
「自己紹介がまだだったな。オレはカッシュ。職業はウォーリアで武器はこのハンマーだ」
そう言って背中に背負っていた大きなハンマーを取りだした。
「ぼくはトムで職業は一応戦士なのかな。で、こっちが魔法使いのソフィア」
「よろしくね」
「トムにソフィアだな。2人ともよろしく!」
「それで、カッシュはどうしてこんなところで倒れていたの?」
「それなんだが、オレはまんげつ草っていうのを探して岩場に来ていたんだが、ロックリザードが大量発生しちまって、そいつらを倒してたらどんどん時間が経っちまって、食料も底を尽き、今に至るというわけだ」
「カッシュももしかして昇格試験でまんげつ草が必要なの?」
「もしやお前らもか?」
「そうなんだよ。あれ?でも、何日岩場にいたの?食料が尽きるって言ってたけど」
「3日くらいかな」
「まんげつ草は満月になる今日から2日3日しかさいてないって言ってなかったっけソフィア?」
「そのはずだけど....」
「え、そうなの?」
しばらくの沈黙の後
「アッハッハッハッハ。どうも俺は人の話を聞かねぇで突っ走っちまうところがあるな。そういえば、準備期間たっぷりあるって言ってたような気がするわ」
カッシュは豪快に笑う。
「もしかッシュが良ければ、僕たちと一緒にもう1回行かない?」
「いいのか?」
「もちろんだよ。ここであったのも何かの縁だし」
「悪いが食料はねーぞ?」
「それは任せてよ」
ぼくがドンと胸を叩くと2人から大きな笑いが出た。
「じゃあ、よろしく頼むわ」
「そうこなくっちゃ。じゃあ、まんげつ草探しに出発だ!」
「おー!」「おー!」
1人増えて3人でまんげつ草のある岩場へと向かう。
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