第38眠 昇格試験
「まんげつ草ですか?」
「まんげつ草です」
カティーさんんはにっこりと微笑みながら答えた。
「説明をさせてもらうと、まんげつ草は満月の日から二日、三日ほどの間しか現れない植物で、草の先に満月のような白い花のようなものをつけるの。まんげつ草はいろんな状態異常を治すポーションを作れる材料になるので結構需要があるの。ただ今言ったように現れる期間も短いし、数もそんなには見つからないのでなかなか難しい依頼になると思うわ。それに、まんげつ草が咲くところは岩場になっていて、ロックリザードという魔物の生息地になっているの。あなたたちが思っているよりも難しい依頼になると思うわよ」
「なるほど。ちょっと甘く見ていました」
「最近、いろんな魔物を討伐していたからね。しょうがないわよ」
この二週間、特訓もかねてぼくたちでも討伐できる魔物の依頼をたくさんこなしていた。
「それで、その満月になるのはいつなんですか?」
ソフィアが訊ねる。
「今日です」
カティーさんがにっこりと微笑みながら答える。
「....え?」
ぼくたちは顔を見合わせてからカティーさんにもう一度向き直る。
「今日です」
もう一度同じようにカティーさんが言った。
「じゃあ、早く準備しなきゃ!カティーさんぼくたちその昇格試験受けます」
「わかりました。手続きはしておきますので早く準備していらっしゃい」
「いってきます!」
ぼくとソフィアは急いで準備に取り掛かった。夕方には準備が終わり、出発することとなった。
「暗くなる時に出発するのは初めてだと思うから気をつけろよ」
ライトさんが声をかけてくれた。
「気を付けていきます」
「おう、行ってこい」
こうしてぼくたちは出発した。最初に依頼を達成した村は冒険者エリアの方から城門を通って外に出た。冒険者エリアは王都の中心から西に位置している。今回は工業エリアの城門、つまり東側から王都の外に出る。ちなみに商業エリアにある城門は南にあり、王城は北にあるという位置関係になっている。東の縄文から外に出ると左手に湖が見えた。そういえば王城の後ろには大きな湖が広がっていて、有事の際には王族は城の裏から船を出して逃げることができる様のなっているという噂を聞いたことがある。本当かどうかはわからないが。とにかく今はまんげつ草のある岩場に向かわなければ。聞くところによると、まんげつ草のまんげつの部分は暗いところでよく光るらしい。つまり夜の方が探しやすいのだ。
「なんか、この時間に出るのワクワクするね」
ソフィアは楽しそうだ。
「ソフィアはすごいな。ぼくはちょっぴり不安だよ」
「大丈夫だよ。この前みたいにトムが勝手に違う道を進んでいかなければね」
ソフィアはちょっぴり意地悪そうに言った。この前の依頼で、森の中でぼくは迷子になってしまってソフィアに迷惑をかけてしまったのだ。
「悪かったよ」
「わかればよろしい」
そんな会話をしていると、道のわきの茂みからガサガサっと音がした。
「え、なに?」
ぼくたちはその茂みに向かって身構える。
そこから出てきたのは、傷だらけの少年だった。
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