第40眠 カッシュと作戦
カッシュは僕らよりも背が高く筋肉がしっかりとついている。きっとこのハンマーを振り回すのに必要なのだろう。鎧ではなく身軽に動けるような服装だ。岩場に向かう道中お互いの話をした。カッシュはつい、半年くらい前に王都に来て冒険者になったのだという。しかし、1人で依頼をこなすのはなかなか難しく、半年かけてようやく昇格試験に漕ぎ着けたのだという。
「今回のゴーン岩場でもそうだけど、1人だと気が回らないことが多くて、最初は失敗ばかりだったんだ。でも、依頼をこなすうちに少しずつ力をつけていって、依頼をうまく達成できた時は本当に嬉しかったぜ」
「よく1人でここまで来たよ本当に。ぼくたちはAランクの人たちに鍛えてもらってるんだ」
「そうなのか、俺も鍛えてもらいたいぜ」
「帰ったら紹介するよ」
「何から何まで悪いな。でも、今回は任せてくれ。一回オレは挑戦してるからな」
そんな話をしていると、ゴーン岩場に到着した。あたりはすっかり暗くなっている。
「ついたな。ほらみろ。そこかしこにロックリザードがいるぞ」
「え?本当?全然わからない。ソフィアはわかる?」
「私もわからない」
「そうなのか。なんかこう、気配っつうのかな?わかんない?」
「なるほどね」
「トムはわかったの?」
「多分カッシュは、気配察知のスキルを持っているんだ。それか、素で敏感に気配を察知できるのかも」
「オレは山の中で育ったからな。動物の気配なんかはだいたいわかる」
「山の中で育つとそんなスキルが身につくんだ」
ソフィアは感心している。
「よしじゃあ挑む前にお互い何ができるか教え合って作戦を立てよう」
「わかった」「オッケー!」
しばらく3人で話し合い、作戦が決まった。
「じゃあ、作戦通りにやってみよう」
「おー!」「おー!」
そういうと、カッシュは1人ロックリザードの気配のするところまでら近づいていった。そして、
「ウォークライ!」
と叫んだのだ。ウォークライは敵を自分に引き付けるスキルだ。続けて、
「不動の構え!」
これはぼくも持っているスキルで、動けなくなる代わりに防御力を大幅に上げる。すると、ウォークライで引きつけられた大勢のロックリザードがカッシュに襲いかかる。ロックリザードは表皮が岩になっていて、剣では攻撃が弾かれてしまう。ハンマーでも弾き返すのがやっとだ。つまりぼくたちにはかなり相性の悪い相手ということなのだが、ぼくたちには優秀な魔法使いがいる。
「アクアウェーブ!」
岩の上からソフィアが叫ぶと、大量の水がカッシュを中心としたロックリザードの群れに襲いかかる。ロックリザードは水に弱い。だから、乾燥した岩場を好むのだ。ロックリザードが水にどんどん押し流されていくが、カッシュは不動の構えの制約のおかげでその場から動かない。水が流れ終わると、そこにはずぶ濡れになったカッシュと気絶したロックリザードたちの姿があった。
「やったねカッシュ」
「ずぶ濡れなんだけどな」
カッシュは苦笑いしているが、お互いを称えてハイタッチをした。
「おーいふたりともー」
「おう!トム!」
「トムの方はどうだった?」
「2人のおかげで見つけたよー!まんげつ草」
作戦大成功だ!
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