第31眠 再会

 城壁の近くに来ると行列ができているのが見えた。あそこがきっと王都の中に入る城門だろう。ぼくもその行列に並ぶためにそこへと向かった。行列に並ぶと何やら先の方が騒がしい。何だろうと思ってみてみると中に入りたい人と衛兵がもめているようだ。


「どうして入れないんですか!」


「どうしてって、さっきから言ってるけど身分を証明できるもの、もしくは金貨一枚を払ってもらわないと入れることができないんだってば」


王都に入るためにはそんな条件があったのか。怪しい人を入れないためには確かに必要なことかもしれないな。


「お金も身分証明も持ってないです。どうしたら....」


「残念だけど出直してもらうしかないな」


その人は、肩を落として振り返った。ぼくはその顔を見てすごく驚いた。


「ソフィア?ソフィアじゃないか!」


ソフィアは顔を上げて僕の方を見るとパッと顔が明るくなり、走ってきて思い切りぼくに抱き着いた。


「よかった。トムに会えた。私もうどうしようかと」


「ソ、ソフィア。あの、落ち着いて。その、みんな見てるし」


行列に並んでいる人たちの視線が痛い。


「ご、ごめんなさい。つい嬉しくって。私ったら」


ソフィアは顔を真っ赤にしながら離れた。本当はもう少しそうしていたかったのだが、さすがにぼくも恥ずかしかった。


「ところでどうして王都に?なにかお使いとか?」


「違うの」


ソフィアアが真剣な顔になってこちらを見る。


「私....私も冒険者になりたいの!」


「え!?」


てっきりあのゴブリンの時のことがあったので、冒険者にはならないのだと思っていた。


「てっきりぼくは、あの時も怖い思いもしたし、前に誘われた時も断ったって言ってたから冒険者にはならないと思ってた」


「確かに怖かったよ。でも信頼できる人がそばにいればこんなに心強いんだって思えたの。それに私の魔法も役に立てるんだと思えたらやってみたいと思ったの。お父さんとお母さんには反対されたんだけど、私がどうしてもやってみたいって言ったら許してくれたの。まあ、条件付きではあるんだけど....」


「条件?」


「うん。まずは、ライトさんたちに冒険者のことを教えてもらうこと。それと....」


そこまでいうとソフィアはごにょごにょと言葉を濁して顔を真っ赤にさせていた。


「え?なに?」


「ご、ごめん。これはトムには言えない」


「なんでだよ」


「いいから。気にしないで」


これ以上は多分聞けないのだろうと思って聞かないことにした。今は無理でも後で聞けるかな。


「そうだ。ソフィアは王都に入れなかったんだよね」


「そうなの。金貨一枚か身分証明になるものがないと入れなくて。どうしよう」


「じゃあ、一緒に入ろうよ」


「え?どうやって」


「まあ、いろいろあって金貨4枚あるんだ」


「こんな大金?まさか怪しいことしてないよね?」


「してないしてない。盗賊を捕まえてその懸賞金だよ。話せば長くなるから中に入ってからにしよう」


そういって金貨二枚を取り出し、衛兵に渡した。


「金貨二枚二人分ね。たしかに。お嬢ちゃん連れがいてよかったね」


「はい!」


ぼくたちは一緒に城門をくぐった。その先には素晴らしい景色が広がっていたのだ。





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