第30眠 夢への第一歩
アレーゼの町を出て半日、もう少しで王都につくというところまで来ていた。途中、豚をショッキングピンクのペンキで塗ったような動物である『ピンクピッグ』を見つけたので、サクッと倒してマルコさんに教わったやり方で捌き、フライパンで肉を焼いていた。焼けてきたのかとてもいい香りがする。お腹がすいていたのでさっきからよだれが止まらない。
「早く食べたい!けどもう少しやけるまで我慢我慢。肉厚だからしっかり焼かないとね。そうだ、これも振っておかないと」
そういって取り出したのはこれまたマルコさんからもらった調味料だ。塩とスパイスがブレンドされていて、とてもいい香りがする。それをさっと肉全体に振りかけてしばらく焼いて完成だ。
「よしできたぞ。本当は白米が欲しいところだけどこの世界にあるかわからないし、今は贅沢言ってられないや。ではでは、いただきまーす!」
そういって肉にかぶりつく。
「うまあああああい!」
肉は脂がのっていてとてもジューシーだ。さっきかけた調味料も味のアクセントになっていて、もらってきてよかったと思った。店をやめるということでたくさん便利なものをもらうことができたのだ。肉のおいしさに感動しながら焼いた分は一気に平らげてしまった。
「残りはこのマジックポーチに入れておこう」
これもその一つで、収納できる容量は少ないが収納したものの時間が経過するのを遅らせて長期間保存できるというものだ。かなり高価なものらしい。ありがたく使わせてもらっている。
「ぼくも収納魔法とか使えたらいいんだろうけど生憎、魔法は全然だしなぁ。まあ、あれば便利ってだけだから」
そう自分に言い聞かせてあきらめることにした。腹ごしらえもしたのでまた元気に歩き出す。王都まではもう少し。あと30分ほどで着くというところで突然声をかけられた。
「おい貴様。あの時のガキじゃねえか」
パッと後ろを振り返るとゴードンが部下と一緒にこちらをにらんでいた。ぼくは、その姿を確認すると無視して歩きだした。
「おい、無視をするな。おいお前らアイツを捕まえろ!」
そう叫ぶが部下たちは動かない。当然だ。彼らはぼくがオーガを倒したのを見ている。部下たちが動かないのを見るとゴードンはその丸い顔をまた真っ赤にして怒り出した。
「ええい、貴様ら。俺様のいうことが聞けないならクビだぞ。それでもいいのか」
さすがに行く当てもないのにゴードンにクビにされては食べることもできなくなると思ったのか。一斉に襲い掛かってきた。ぼくは「はあ」とため息をつくと、持っていた荷物を降ろし、剣を取り出すとエンチャントスキルを使った。この前使った時よりもスキルレベルが上がっているのでさらに大きな炎をまとわせることができるようになっている。それを横に薙ぎ払うとぼくの前に炎の壁ができた。それを部下たちはギリギリのところで回避し、一目散に逃げていった。一人取り残されたゴードンはぽかんとしている。ぼくは近づいていき、
「ぼくの気が変わらないうちに失せろ」
と言ってやった。ゴードンは半べそをかきながら
「うわあああああん」
と叫んで逃げていった。あの処刑台の時とは大違いだ。王都につく前に嫌な奴にあったが、ちゃんと吹っ切ることもできたしよかったのかもしれない。本当はゴードンの顔を見たときに少し震えてしまっていたのだが、今はもうおさまっている。改めて王都に向けて歩き出し、30分かけてついにたどり着くことができた。目の前には高い城壁がそびえたっている。
「やっと着いた!ここが夢の第一歩だ!」
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