第18眠 異変

 ぼくは、町を歩きながら昨日の夢を思い出していた。昨日見た夢は、実はいつもと違う夢だった。いつもならその日あったことをもう一度体験するようなものなのだが、その夢が終わった後、自分の前にぽっと火がともったのだ。しばらく見ていると火は、なにやら石と合わさって赤い石へと変わった。すると突然体の中が熱くなり、立っていられなくなる。立っていられず地面に倒れると、倒れた先には青い花があった。それをつかむと光が差し込んできて、体の熱さもなくなりむしろ心地よくなったのだ。その心地よさにしばらく身を任せているとぼくはその心地よいまま目覚めたのだ。思い出してみると悪夢だったような気もするが、心地よく起きられたのであまり気にしてはいなかった。しかし、いつもと違うというのは何か変だ。


 しばらく歩いていると商店街みたいなところに出た。魚屋、八百屋、肉屋、花屋など様々な店が立ち並んでいた。この世界でそう呼ぶのかはわからないが。商店街を抜けると真新しい大きな屋敷が見えた。あれがマルコさんが言っていた最近羽振りがよくなった人の家だろうか。いったい何をして財を成したのだろう。後でマルコさんにでも聞いてみよう。そう思っていると町の外れに来た。町の外れには川が流れていて、遠くの方に山が見えた。きっとそこからこの川が流れてきているのだろう。ふと川に目をやると、魚が泳いでいるのが見えた。なかなか川幅もあるのでいろんな魚があちこちにいるのが見える。しばらく見ているとおかしな動きをする魚がいるのに気が付く。魚の群れの中に何匹か川底にある岩にぶつかったり、ほかの魚と違う方へと群れを離れていってしまうものもいた。同じ群れの魚と明らかに色の違うものもいた。こんなことがあるのだろうか。あいにく魚には詳しくなかったため、分からなかった。分からないのであれば詳しい人に聞こう。そう思って、魚屋のある商店街まで戻ってきた。


「いらっしゃい兄ちゃん。何が欲しいんだい?」


「あ、すみません。買い物に来たんじゃないんです」


そういうと店主は、じゃあ何しに来たんだといわんばかりの表情をした。


「川魚について聞きたくて」


「川魚?」


「はい。町の外れにある川でおかしな行動する魚がいて、それが気になったんです」


「あーそれか」


何やら店主は知っていそうだ。


「ここ一か月くらいでおかしな魚が混じっていることがあるんだ。しかもあの川でとれた魚だけな。例えば頭に傷をつけた魚や、何かで内側から暖められたようになっている魚とかな。そういうのは売り物にならねえんで、よく覚えているよ。それに関係しているかもしれねえな」


「なるほど。あの川周辺で何か変わったことはありますか?」


「うーんそうだなぁ」


店主は腕組みをしながら考え、やがて何かを思い出したようで、パンッと手を打った。


「川の先に山があるんだが見たかい?」


「はい。見ました」


「あの川に沿って登っていくと鉱山があるんだ。なんでも金や鉄なんかが取れるらしい。そこに最初に目を付けたのがあのでっかい屋敷を立てたゴードンさんってわけよ。俺らもそんな鉱山になってるなんて知らなくてな。で、いまはゴードンさんちの関係者しか入れないようになっているから、何をしているんだかわかんねえんだ。なんか怪しいだろ?」


「なるほど。それは何かありそうですね。教えていただいてありがとうございます。じゃあこれください」


そういって、大きな魚を指さした。


「お!兄ちゃんわかってるねえ!まいど」


「またよろしくお願いしますね」


そう言って魚を袋に詰めてもらい(入れる袋も買った)店を後にした。この魚はゴディンさんに料理してもらうとして、明日は鉱山まで行ってみることにしよう。そう思いながら宿屋への道を歩いていった。

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