第16眠 流行り病
心配していた町までの道中だったが、思っていたよりも盗賊たちがぐっすり眠っていてくれたおかげで何事もなくたどり着くことができた。町につく間マルコさんたちの話を聞いた。マルコさんは、この先にあるアレーゼという町で商人をしているのだそうだ。ほかの町や村、時には王都まで行って品物を売買している。いつもはマルコさん一人でいろんな町を回っているのだが、とある理由で今回はエマちゃんもついてきたのだという。なんと、アレーゼの町が流行り病に侵されてしまっているということだった。なんでも、町の4人に1人はこの病にかかってしまっているのだという。マルコさんの妻で、エマちゃんのお母さんであるエリザさんもこの病にかかってしまっているらしい。どうしても、病気を治してあげたかったマルコさんはエリザさんをなぜか元気なお隣さんに任せて、エマちゃんを連れて一日で帰ってこられる範囲で、よい薬草を探しに村々を回っていたのだ。
「それは大変でしたね」
「そうなんです。エマもなれない遠出で疲れてしまっているし、危険にもさらしてしまったし。本当はお隣さんのうちに預けたかったんだですが、どうしても行くと聞かなくて」
「エマもおかあさんのびょーきなおすの!」
「こんな調子なんです」
そういって隣に座っていたエマちゃんの頭をなでる。
「急にその病が流行ってしまったんですよね」
「そうなんです。この一か月で急に。しかもおかしなことにかかる人とかからない人がいるんですが、かからない人がどうしてかからないのか原因が全く分からないんです」
「なるほど。じゃあ他になんでもいいのでこの一か月で何か変わったことはありませんでしたか?」
マルコさんはうーんと考える。
「特に病気に関わることではないと思うんだが、急にこの一か月で羽振りがよくなった奴がいるです。でも、関係ないですよねこんなこと」
「いえ、何が原因になるかわからないので、もっと思い出してみてください」
「そうだなあ」
そういって、マルコさんはその町の知り合いが結婚しただの、酒場でけんかがあっただの、町であったことをいろいろ絞り出してくれたがいまいち病気と結びつかなそうだ。
「どうです。何か分かりそうですか?」
マルコさんが期待の目でこちらを見てくる。
「さっぱりです」
マルコさんはがくっと肩を落とした。
「まあ、そうですよね」
「でも町に行けば何かわかるかもしれません。町の外から来た人の方が気が付くこともあると思うので」
「それを期待します。さあ、もうすぐ着きますよ。あれがアレーゼの町です」
マルコさんが指さす方に街の明かりが見えてきた。あたりはすっかり日が落ちている。あの町で何が起こっているのだろうか。不安を抱きながら馬車は街へと近づいていく。
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