第15眠 親子
商人はへなへなとその場に座り込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
商人はうつむいていたが、声をかけるとへらっと笑って、
「すみません。急に力が抜けてしまって」
「最後、本当に助かりました」
そういって手を差し伸べると、
「いや、私たちの方こそ助かりました。あなたが来なければあのまま殺されて、何もかも奪われていたことでしょう」
と言って僕の手を取り、立ち上がった。その後娘のもとへ行き、抱きしめてあげていた。娘はわんわん泣いている。
「怖かったな。あのお兄ちゃんが助けてくれたんだよ」
「お兄ちゃんありがと」
この人たちを守れてよかったと心から思った。にっこり笑って
「どういたしまして。でも、お兄ちゃんもパパに助けられたんだよ」
「そうなの!パパすごい」
商人は娘に褒められ、照れていたがふと何かを思い出したようで、抱いていた娘をおろして、倒れている三人に近づいていくと棍棒で念のため一回ずつぽかぽかと殴っていた。その後一応剣の傷の手当をしてやり、三人を縄で縛った。
「手も足も縛ったのでこれで動けないでしょう」
「こいつらどうするんです?」
「このまま近くの町の警備隊に引き渡すのが一番いいでしょうが、万が一のこともあるので....」
しばらく考えると、申し訳なさそうに
「もしよろしければ一緒に来てもらえないでしょうか。このままここに置いておくのもいろんなことが考えられますし、もし逃げられた時の報復が怖いので」
「もちろん。ぼくでよければついていきますよ」
「ありがとうございます。申し遅れました。私はこの先の町で商人をしているマルコです。こちらは娘のエマ」
エマもマルコの後ろから出てきて、
「エマです」
と自己紹介してくれた。
「ぼくはトムです。二人を全力で守ります」
「お若いのに頼もしいです。では、できるだけ早く準備しましょう。馬の傷もそんなに深くなかったようですがあまり速くは走れないと思いますのでね。半日あればつくと思いますのでその間よろしくお願いします」
その後散らかった荷物を片づけたり、馬のケアをしたりして準備を急ぎ、一時間しないうちに出発することができた。
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