第14眠 盗賊

「盗賊だ!」


だんだん馬車と盗賊たちが近づいてくる。近づいてくると商人らしき人が馬車の手綱を握っていることが分かる。とても必死な表情だ。その後ろには、小さな女の子が馬車に積んである木箱につかまって揺れに耐えているのが見えた。助けなきゃ。そう思っていると、盗賊の一人が馬車のすぐ横まで近づいてきて馬車の馬に向かって矢を射かけた。その矢は馬のお尻に命中し、馬は傷みながらもなんとか走るがもうスピードは出ない。盗賊の一人が馬に乗りながら馬車の前に出て馬車の足を止めてしまった。盗賊たちに囲まれてしまったのだ。


「さて、馬車の中にあるもの全部いただこうか」


盗賊はニヤニヤと笑いながら商人に近づく。


「それは困ります。私たちにも生活がありまして」


「お前が困っても俺たちには関係ねえんだよ。それとも何か?ここでそのガキと一緒に死にてえか?」


「そんな、どうか娘だけは手を出さないでください」


「そんなこと言われたら余計手を出したくなっちまうよ。へっへっへ」


そういって盗賊の一人が女の子の方へと近づいていく。商人も追いかけて足に縋りつく。


「やめてください!」


「うるせえ!くっついてくんな。黙って見てろ」


商人を蹴り飛ばす。そして、盗賊が女の子をつかもうとしたその時、ぼくは盗賊の手をつかんでいた。


「こんなことやめろ!」


「なんだおまえ!?」


盗賊はびっくりした様子だ。


「おい、手を離せよ!いででででで」


盗賊はかなり痛がっている。ぼくは、ここに近づく前に身体強化のスキルを使い、素早さと腕力を上げていた。ぼくの身体強化で痛がっているってことはそんなに強くないのかもしれない。そう思い、手を放してやった。


「このガキ!殺してやる」


そう叫んだかと思うと、腰からククリナイフを抜き、切りかかってきた。ぼくも剣を抜いて相手の動きを見ながらサッとかわし、相手の背中を切りつける。


「ぐあっ」


っと声を上げたかと思うとその場に倒れこむ。思っていた通り、あのゴブリンメイジよりは動きも遅いし、魔法も使ってこないため強くない。すると、仲間がやられたのを見て、残りの二人が同時に襲い掛かってきた。ぼくは剣術スキルを使い二人をいなす。いなされた一人が僕に向かってきた。ぼくは、そいつを一人目と同じように切り付けて倒す。だが、もう一人がみえない。探そうと目線を変えよとするとなぜか体が動かない。


「へっへっへ。かかったな。俺の影縛りに!」


声は僕の後ろからした。


「このスキルはなぁ。相手の影を踏むことで相手の行動を縛れるんだが、SPをけっこう食うから一回の戦闘で一回しか使えねえんだ。だからあいつに先に行かせて俺はお前の動きが止まる瞬間を待ってたってわけだ」


ご丁寧に説明してくれているが、これでは全く動けない。ザッザッと影を踏みながら近づいてくる音が聞こえてくる。どうしたらよいのか分からず、ぼくは泣きそうだった。そして、ククリナイフが僕の首もとにあてられる。


「よくもやってくれたよなあ。でも、最後に勝ったのは俺たちだ。せいぜいあの世で後悔することだな」


盗賊はアッハッハッハと高笑いをして、


「死ねええええ!」


と叫んだ....と同時にボカッと何か鈍器のようなもので殴りつける音がした。すると体の自由が戻る。後ろを振り返ると、気絶して地面に倒れている盗賊と棍棒を持った商人の姿があった。













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