第13眠 旅立ち
数日後、ぼくは大きなリュックにたくさんのものを詰めて旅立とうとしていた。
「本当に行っちまうんだな」
アレックスさんはさみしそうだ。
「いつでも帰ってきてね」
マリナさんは涙ぐんでいる。短い間だったがとてもよくしてくれた二人だ。
「二人とも、短い間だったけど本当に良くしてくれてありがとう。一人になってしまったぼくを温かく受け入れてくれてありがとう」
そこまで言ったとき僕の目からも涙があふれた。
「あはは、笑って旅立ちたかったんだけどな」
「いいのよ。泣きたいときは泣けばいいの」
「そうだぞ、苦しくなったら苦しいって言えばいいんだ。いつでもお前には戻るところがあるんだからな」
「ありがとう二人とも。僕は二人を本当の両親だと思っています」
「俺たちもお前を息子だと思っているぞ。さあ、俺たちの息子の旅立ちだ。行ってこい」
「行ってらっしゃい」
「うん。いってきます」
涙を拭いて、ぼくは笑顔で手を振りながら村を出た。村人たちも見送りに来てくれていた。その中にはソフィアもいた。本当はソフィアと一緒に冒険者になりたかったが、あんな怖い思いをして冒険者になりたいとは思えなかったので誘えずじまいで旅立ってしまった。少し心残りではあったが、それぞれの道を歩いていけばいいと思った。さて、これからどんな冒険が待っているのか楽しみだ。ぼくは、王都へ行くこの道中も楽しもうと決めた。王都までは、歩いて三日ほどかかるらしい。村の外に出たのは、ライトさんたちとゴブリンを倒したあの時以来だ。見たことのない植物や動物たちが増えてきた。ぼくは見たことのないものを見つけるたびに家から持ってきた図鑑を見て、興奮していた。もちろん載っていないものもあったが。そのたびに特徴を持ってきた紙にメモしていた。本当は絵をかければ誰かに聞きやすいのだろうが、あいにくぼくに絵を描く才能は全くといってもいいほどなかった。絵を描くたびに村人たちに笑われてたっけなあと思いながら、歩いていると三叉路にでた。看板が立ててあって、右に進むと違う村に行く道で、左斜め前の道を進むと王都につく道のようだ。
「よし、こっちだね」
そういって左の道へ進もうと一歩踏み出したとき、右の道から何やら地響きが聞こえてきた。
「なんだろう?」
右の道を見てみると馬車がものすごいスピードでこちらに走ってきていた。その周りには馬に乗ったいかにも悪そうなやつらが3人、馬車に弓を射かけながら追いかけていた。
「あれは....盗賊だ!!」
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